「ゴールデンゲートブリッジに対する考察」 渡 由貴
私は、アメリカのカリフォルニア州にあるゴールデンゲートブリッジが大好きだ。今回の授業のテーマは「橋」であったので、この機会にゴールデンゲートブリッジの建設の背景と、建設してから今に至るまでの状況をもとに、その存在意義について考察してみようと思う。
ゴールデンゲートブリッジは、1937 年に開通した、サンフランシスコ湾と太平洋を繋ぐ全長 2737mのつり橋である。ゴールドラッシュ後の 20 世紀初頭、サンフランシスコの人口は 100 万人を突破し、大都市へと急成長を遂げた。しかし、サンフランシスコから対岸にあるカリフォルニア州北部へ行くには、フェリーを利用するか陸路を遠回りしなければならなかった。そこで、最短で北部へと繋ぐことのできる橋の構想が生まれ、1933年に建設が始まった。橋の構造としては、まず二つの主塔がこの単径間つり橋を支えている。この塔の頂部から二本のメインケーブルを掛け渡し、岸のアンカーブロックに固定して、ハンガーロープで吊られた道路を支えている。各ケーブルの長さは約 2130m であり、各ケーブル内には全長 128750km ものワイヤーが使用されている。橋の色は、たまたま下塗剤として鋼材に塗られていた赤い色をコンサルタント技術者が気に入ったため、この「インターナショナルオレンジ」という色が採用された。完成までは、総額 3500 万ドル以上が費やされた。また、建設時、足場の上では強風が容赦なく吹き付け、対策として安全ベルトの着用やネットの設置を行うも、多くの命が犠牲となった。
ゴールデンゲートブリッジの建設のおかげで、人々はカリフォルニア州北部へ遠回りせず短時間で行き来することが可能になり、都市の交通網が発達し、地域住民の交通状況改善へ大きく貢献した。またそれだけでなく、ゴールデンゲートブリッジそのものが観光の対象として有名な存在になり、サンフランシスコの経済に良い影響を与えている。完成当時、ゴールデンゲートブリッジはつり橋として世界最長を誇り、アメリカ建築の象徴的存在となった。今では世界中の人々から「サンフランシスコといったらゴールデンゲートブリッジ」というイメージが持たれるほど、アイコニックな存在となっており、その周辺地区は世界で主要な観光名所となっている。
私は去年、サンフランシスコから車で一時間半くらいのサクラメントという都市へ留学していたので、ゴールデンゲートブリッジを何度も訪れた。行く前からこの橋を知っており、写真で見ただけでも美しいと感じていたが、生で見ると圧倒されるほどたたずまいがずっしりしていて、だけれど鮮やかな「インターナショナルオレンジ」のカラーにより生き生きとした感じもして、見るだけで何か大きなパワーをもらえるような存在だった。ただ、そんな迫力があるのだけれども、悪目立ちしている訳では無く、周辺の景観とも上手く溶け込んでいるのだ。真っ青な海と対比して映えるオレンジ色、けれども真っ赤ではなく少し温かみのある色であることや、奇抜さが無くシンプルな形であることが、その理由ではないかと思う。こういった、新たな構造物が既存の構造物や自然とどう調和し、美しい景観を新たにどう作り出していくか、という面での検討も非常に大事なことだと感じた。
しかし、良い面だけではない。ゴールデンゲートブリッジは、その高さのおかげで自殺の名所となっており、世界一飛び降り自殺の多い建造物である。よって現在は、自殺中止を呼び掛けるポスターの掲示や、スタッフによるパトロール、夜間の歩行者の通行禁止など、自殺対策に莫大な費用が掛けられている。仕方ないと言えばそれまでだが、みんなに注目されるような大規模な構造物を作る際は、それだけ人を惹きつけインパクトを与えるものになり得る、ということも意識する必要があると思う。
以上をまとめると、ゴールデンゲートブリッジは新たな交通手段と観光資源として、サンフランシスコの経済成長に大きく貢献した。そしてその存在は、人々の心に残る美しい景観を生み出している。建設するのに高額のコストや労力、多数の犠牲者も伴ったが、結果としてそれだけ甚大な影響を与えるものができたことから、作った意義は大いにあったと言えるのではないだろうか。ただ、設計する前にそれが人々の心理にどう働きかけるのかということまでを考えて、飛び降り自殺が発生しにくいような構造にすることができていたらさらに良かったと思う。今後は、必要な対策は行っていきながら、この橋が長い間人々に愛されながら利用されることを願っている。
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