細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

学生による論文(27) 「橋梁の社会における役割・効果」 藤田 光(2022年度の「土木史と文明」の講義より)

2022-11-03 19:28:16 | 教育のこと

「橋梁の社会における役割・効果」 藤田 光

 今回は橋梁の発達についての授業であった。

 僕は、橋は以下の2点で特に重要な意味(役割・効果)を持っていると考える。

 1点目は、川や海に橋が架けられることにより、今まで海上交通を用いて渡るか別の橋に迂回して渡らなければいけなかったことが解消し、大量の人や物流が高速に通行できることが可能になることで、様々な人や物流の移動時間の短縮や安全な交通移動、物流の増加や安定に中長期的に繋がるというストック効果の観点からのメリットがある。具体例として本州四国連絡橋を取り上げる。参考文献*1も参考にして以下記す。本州四国連絡橋は、昭和63年(1998年)に開通した神戸・鳴門ルート(明石海峡大橋・大鳴門橋)、昭和53年(1988年)に開通した児島・坂出ルート(瀬戸大橋)、平成11年(1999年)に開通した尾道・今治ルート(瀬戸内しまなみ海道)からなる。本州四国連絡橋の開通により、本州と四国間の自動車交通量が役3.4倍、自動車貨物流動量が約2.5倍と大幅に増加した。また、本州四国連絡橋の経済効果は全国に及び、平成30年(2018年)の効果額は約2.4兆円、このうち四国地方の効果額は約0.9兆円であり、四国地方の総生産の約6%も占めている。加えて、瀬戸中央自動車道が開通した昭和63年(1998年)から平成30年(2018年)までの累計では全国の効果額は約41兆円となっている。また、昭和63年(1998年)には1日平均26往復便数しか本州・四国間の高速バスが運行されていなかったが、平成29年(2017年)には平均375往復便数の高速バスが運行されている。以上のように、物流におけるかなりの経済効果、輸送力の向上を橋はもたらしている。上記のことに関連して、地域の産業の発達にもかなり貢献していると考える。具体的には、本州四国連絡橋が開通することにより本州と四国の間の物流が増加し、より多くの大型トラックが本州と四国を行き来することになった。そして、徳島県にはLED産業がより集積し、平成21年から28年の推移では出荷額が1.9倍になり、平成28年の全国シェアでは約64%を占めている。また、愛媛県の今治タオルのシェアが拡大した。さらに、真鯛が高い鮮度で大都市の市場へも出荷されるようにもなった。加えて、高速道路ネットワークの拡充により、流通形態が確率されたことから、四国にコンビニが展開するようになった。上記に記したことから、本州四国連絡橋は地域の産業の発達にも貢献したと言える。

 2点目は、橋が街のシンボルとして果たす役割である。橋は人間のデザイン等の創造的才能を表す傑作でもある。今回の授業では猿橋を触れて下さったが、かなり立派な橋であると私自身も思っている。猿橋は、羽木橋あるいは肘木橋と呼ばれる張り出し桁構造で作られており、木製で作られている橋である。木製で作られた橋であることから、周囲の景観や日本の古来の雰囲気ともかなりマッチしており、個人的にはかなり綺麗だなと改めて実感させられた。これも1226年以前から使用されていたことから、日本古来の土木技術のすごさを改めて実感させられた。また、今回の授業では、ローマの時代から橋は架けられており、それが現在でも使われていることを学んだ。そのことから、その時から架けられた橋はかなりのストック効果を発揮しているが、それ以外にも昔からの人々のデザインや技術のすごさを改めて実感することができた。具体的には、今回の授業で紹介していただいたポン・デュ・ガールを例に挙げ、参考文献*2、*3も参考に以下述べる。ポン・デュ・ガールはフランス南部・ガール県のガルドン川に架かる水道橋であり、50kmも離れた水源地のユゼスから当時ネマウススと呼ばれたニームの町まで水を引いていた水路の一部であり、6世紀頃までは実際に使われていた水道橋である。この水路は水源地から街までの高低差は17mほどしかなく、1kmあたり34cmという微妙な勾配をつけて水が流れるよう設計しなければならなかったため、そこで建設されたのが、16階建てのビルに匹敵する高さ49mのポン・デュ・ガールである。ポン・デュ・ガールは二千年近く前に作られたが、長い風雪に耐え、いまだに構造的な問題が生じていない。主体構造を石、煉瓦、コンクリートブロック等の塊状の材料を積み上げて作った構造である組積造で作られている。そのことから、この2000年前においてもこのような技術があったことに驚き、ローマの偉人のすごさを再認識した。また、ポン・デュ・ガールは自然に調和しつつ景観に配慮された橋であると思っている。さらに、幾何学的で美しい山荘のアーチはローマの平和の特徴になっており、人々から愛され続けている。そのことから、現在は世界遺産にも登録されている。そして、それが現在観光でも広く用いられているため、橋は綺麗だと観光にも繋がるということも実感することができた。

 以上のことから、橋には様々なすさまじい役割・効果があり、それを担っていることを今回の授業を受け、その後考えることで改めて実感することができた。今後、そのことをしっかりと頭に入れた上で勉強や研究、土木技術者になった後の仕事を行っていきたいと思った。加えて、今後も様々な橋を見て回り、どのような橋が人々にとって映りが良いのかについても様々な文献も読みつつ考えていきたいと思った。

 今回の授業では明石海峡大橋が誇っていた世界最大の中央支間長が1915チャナッカレ橋に抜かれてしまったことも改めて学んだ。細田先生もおっしゃっていたが、日本は社会インフラにより投資をすべきだと私も考える。また、私自身も将来、社会インフラを担う人材として、人々に愛されるような社会インフラを作れるように、今後も一生懸命土木を学ばなければならない、と改めて実感させられた。

〈参考文献〉
*1.本四架橋開通による経済効果 環瀬戸内海地域交流促進協議会(2022年10月22日閲覧)
https://www.skr.mlit.go.jp/pres/h31backnum/i1695/190415-4.pdf
*2.『構造デザイン講義』
*3. ポン・デュ・ガール 2000年前の水道橋は ローマ人の英知の結晶 世界遺産(2022年10月22日閲覧)
https://www.hankyu-travel.com/heritage/france/pontdugard.php


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