「橋梁による「立体交差」の計り知れない恩恵」 堀 雅也
橋梁の役割は、様々な「道」を立体交差させることである。無論道路に限らず、鉄道や河川などの立体交差についても、大半が橋梁によって実現されている。一般に橋梁と言えば、河川を越すために掛けるもの、特に長大なものが想起されるが、現代においては道ごとに階層を分けることでそれぞれの通行を簡便にする、立体交差のために使われているものがとても多い。特に高架橋の活用は、都市部における道路の利便性を格段に向上させており、現在も様々な箇所で高架化工事が行われている。以下に、具体的にどのような恩恵があるかを整理する。
まず、道路立体交差(道路同士の交差)においては、最も支障を減らしたジャンクション型(信号が存在しない)、直進交通は支障を受けないアンダーパスとオーバーパスの組み合わせ、一方の道路の直進交通が支障を受けないアンダー・オーバーパスの3パターンに大別できる。
ジャンクション型は、用地を多く必要とするデメリットを持ちつつも全ての交通を信号で止める必要が無く、豊田JCTや平和島ランプ直下(平和島公園東側)の交差点で採用されている。これらはいずれも用地取得が行いやすい場所であり、デメリットが無視できるために採用されたと考察出来る。高速道路のジャンクションとしては、日本においては比較的メジャーな形態ではあるが、平和島ランプ下の交差点に採用されている理由としては、いずれも倉庫街を結ぶ故に平日は非常に混雑する都道318号(環状七号)線と都道316号線の交差点であるために、西側の平和島交差点や東側の環七大井ふ頭交差点まで列を伸ばさないための策と考えられる。また、日本初の道路立体交差である松原橋交差点は、環状七号側にのみ信号のあるジャンクション型であるが、都市計画上は完全なジャンクションにする予定である。
オーバーパスとアンダーパスが併用されている形態は、用地をほとんど増やさずに直進交通を流すことが出来、関東では美女木JCTが代表的と言える。但しこの構造には右左折車が信号の支障を受けるデメリットもある。
オーバーパス・アンダーパスのみを擁した交差点は取り上げるまでもないほど多く存在しており、こちらも松原橋と同じく信号の支障を受けない方が主となって構成されている。大学近くでは三ッ沢西町の交差点がこれに該当し、車通りの多い新横浜通りを主として構成されている。メリットとしては費用が抑えられる点が挙げられ、また従となる道路の信号を長く取れるため、副次的に従となる道路の混雑も緩和する事が期待できる。
次に、道路と鉄道の立体交差を挙げる。これは踏切を解消して道路側の交通をスムーズにする他にも、踏切の解消によって事故の減少、維持コストの減少が見込まれる。基本的には道路を上に振ってオーバーパスを形成するが、日照権の問題などによりアンダーパスを形成したり、交差道路が多い場合には鉄道を高架化・地下化したりする例も多い。
今回は道路についてのみ述べたが、鉄道同士の立体交差かつ道路とも立体交差する京急蒲田、全て高架上で立体交差を繰り返す宇多津など鉄道においても立体交差は重宝され、大抵の場合道路立体交差より大がかりな橋梁が使われている。そして上記すべての工事によって減らされる事故、減らされる渋滞、それによる環境改善、時間短縮、輸送力の増強などは全て「時間で積分出来る(=使えば使うほど積み重なっていく)」ストック効果であり、日々身近なところで一般人も恩恵を受けることが出来ているのは非常に喜ばしいことである。
参考
・大田区 まちマップおおた https://www2.wagmap.jp/ota/Portal 最終閲覧日:2022年10月21日
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