細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

耐久性向上への挑戦

2017-06-17 10:56:30 | 研究のこと

東北の4泊5日の出張が終わりました。

5月に入って国内出張モードに移行しましたが、何と今回が今年度の初の東北出張でした。濃厚な4日間の出張で、釜石でゆっくりと疲れも取って、釜石線で盛岡まで出て、こまち号で東京に戻っています。帰宅後は、溜まっている仕事をさばくモードに切り替えます。

様々なことを感じ、勉強した4日間でした。それぞれの地域で、特色は異なるものの、これまでに基盤を作ってきた品質確保、耐久性確保の取組みが進められている様子、進化している様子に感激しています。一方で多くの課題も山積しているので、以下、まとめておきます。

13日は、福島河川国道事務所の桑折(こおり)高架橋でした。1時間の座学での勉強会を実施し、私は新気仙大橋での高炉セメントでの高耐久床版のことについて話をしました。施工者からは、この高架橋での橋脚のひび割れ抑制・品質確保についての話と、別の彦平(ひこへい)橋での高炉セメントを活用したPCコンポ桁の高耐久床版についての話がありました。

桑折高架橋は、工期短縮も狙っての鉄骨を活用しての橋脚で、ひび割れが発生した場合にどのようなひび割れになるのか不安もあったようで、種々の対策が試みられていました。19径間の橋梁なので、同じような形の橋脚がたくさんあり、それぞれでひび割れ対策も異なっているため、壮大な実験と捉えることもできます。一度に何本もの橋脚を見せていただいたので、効果的で合理的なひび割れ対策は、答えが見えていたように私には思います。そのように、現場研修会の最後で総括させていただきました。試験施工の結果は適切にまとめて発信していただければと思います。



彦平橋での実施工も踏まえ、桑折高架橋では高炉セメントでの高耐久床版となります。復興道路での取組みの集大成の一つとも言えると思うので、みんなで勉強しながら良いものを造っていきたいです。

14日は、盛岡からレンタカーで出発し、三陸沿岸に出て、普代へ向かいました。

鹿島建設の現場で、白井トンネルの施工の様子をじっくりと見学させていただきました。この現場の國谷所長は横国土木のOB(一期生)ですし、トンネル担当ではありませんでしたが、横国土木OBで二年目の長島君もいました。

トンネル覆工コンクリートは施工目地部がどうしても弱点になり、浮き・はく離・はく落が多発しますが、この現場では繊維のメッシュを施工目地から数十cmの区間に配置する対策が取られていました。有効だと思います。ただ、目地のVカットの部分にはシートは届きませんので、そこがどうなるか、今後の点検等で明らかにされていくでしょう。



鹿島の現場事務所で15時~17時で勉強会。私が講師を務めました。

発注者関係が半分、施工者(様々な会社)が半分で、合計30名以上いたかと思いますが、いろいろな話題を織り交ぜ、対話しながらの楽しい勉強会になりました。

初参加の発注者の監督官からは、「2時間、誰も寝てないのは初めて見た。大変面白かった。」と言っていただきました。楽しい講演、楽しいレクチャーは私の特殊技能でもありますので、全国で有効利用していただければ教師冥利に尽きます。

勉強会後には、久慈に向かう途中でいくつか構造物を見させてもらいましたが、南建設の造った橋台の出来が素晴らしかったです。以下、金濱監督官、南建設の四役さんと記念写真。ひび割れ抑制という意味でも素晴らしい成果でしたし、コンクリートの出来栄えは本当に素晴らしかったです。こういう構造物を一つでも増やしていくことが本当に大切だと思います。



14日の夜は久慈で懇親会。仲良しの金濱監督官や、14日、15日の勉強会の関係者らと楽しく夢を語り合いました。昨年も来ましたが、復興道路が完成するまで、もうしばらく通い続けたいと思います。

15日は、久慈から少し南下して、夏井高架橋へ。三井住友建設の施工で、平所長が陣頭指揮を執っておられ、素晴らしい施工をされていました。

凍結防止剤の対策を検討している現場ですが、PCの水セメント比が38%のコンクリートとフライアッシュの相性が施工性の観点であまり良くないようで、今後どうなるのか注目です。壁高欄については、高炉セメントも有効と思いますよ、というアドバイスはしておきました。

現場視察後、10時~12時で、三井住友建設の現場事務所で勉強会。平さんらしい素敵な事務所で、橋梁の写真集やダムのマンガ「昼間のパパは光ってる」も陳列されていたので、隣に「新設コンクリート革命」を一冊置いておきました。

勉強会では、ひび割れ抑制の話と、凍結防止剤散布下での耐久性確保の話をしました。八戸工大の阿波先生も参加いただけたので、凍害対策の部分は専門家の阿波先生にレクチャーいただき、これも充実した勉強会になったと思います。参加者は40名以上で、発注者関係が6割、施工者が4割でした。



夏井高架橋を後にして、前日も訪れた白井トンネルへ。覆工コンクリートの打込みをやる日だったので、打込みの終盤でしたが、見学させていただきました。覆工コンクリートの打込みを見るのも私は5回目くらいになりますが、見るたびに視点も増え、今回もとても勉強になりました。また、この現場では、掘削の管理に3次元スキャナー等を活用する取組みを行っており、覆工コンクリートのひび割れシミュレーションを研究している我々にとっては、大変貴重なデータになると思われ、今後連携させていただけるよう、お願いしておきました。



白井トンネルの打込み見学終了後、150km程度の移動距離と思いますが、釜石へ移動。到着後、仲良しの手間本監督官とこじんまりとした濃厚な懇親会。

16日は南三陸国道事務所の手間本さんの管轄の構造物を視察。未明に雷雨だったので、PC桁の打込みは中止かなと思っていましたが、奇跡的に雨が上がり、打込みがなされました。ちなみに昼前から激しい雷雨が断続的にあったので、本当に奇跡的に打込みを見ることができました。



八雲こ道橋という橋で、現場到着前に手間本さんにこの現場の所長の阿久津さんが非常に面白い人であることを聞いていました。以前、越喜来(おきらい)高架橋を施工されていたときに一度お会いしていましたが、本格的に対話するのは今回が初めてでした。特徴的な看板が現場にたくさんかかっているのが阿久津さんの現場です。

素晴らしいチャレンジをされていました。現場打ちのPC桁の高耐久化にはいくつか道筋があると思いますが、ここでは、他の現場にも適用できそうな、標準工法になる可能性のある対策がチャレンジされていました。桁端部のみ高炉セメントで行く、という対策ですが、私も関与させていただき、しっかりとこのチャレンジを成功させ、適切に情報発信していこう、という話になりました。

コンクリートの打込みを現場に付きっきりで指導する阿久津さんの熱血にはしびれました。



橋脚も桁も養生シートでぐるぐる巻きにされており、その観点でも高耐久PC桁へのチャレンジでした。出来上がりがとても楽しみです。



その後、小佐野高架橋の高耐久床版(高炉セメント)の現場視察に行き、近くの橋台でのひび割れ抑制対策も視察。養生シートで覆われていましたが、ひび割れ抑制にも成功しており、山口システムが東北でも拡がって来ていることをうれしく思いました。29m幅の橋台でひび割れ誘発目地なし。素晴らしい。

小佐野高架橋の現地を歩き、二つの川を跨ぎますが、そこは風が強く、ひび割れの面でも川を跨ぐ部分は難しいかもね、という話をしながら歩きました。



午後は、南三国の事務所で、小佐野高架橋の高耐久床版の打ち合わせ。施工者2社と、手間本監督官と私とで打ち合わせ。基本方針や、実験で計測すべき項目について話し合い、1時間でいろいろなことが決まりました。私の研究室も重要な役割を担っていきますので、今後が楽しみです。

そうこうしているうちに、仲良しの加藤ひろしさんが現れ、トンネルの品質確保について話が始まりました。やっぱり施工目地のところの不具合がなくならないんだ、という話になり、点検の結果を書類で見せてもらいました。現場に行こう、ということで、二つのトンネルの視察をリクエストしました。

一つは、それなりに補修箇所が発生したトンネル。実際の補修箇所を見て回りました。

点検結果を見ながら実際の構造物の不具合を見て回るのは大変に勉強になりました。

二つ目のトンネルは、西松建設の河内さんが施工した鵜住居第二トンネル。施工目地での不具合を無くすための対策が試みられたトンネルですが、その区間はほとんど浮き・はく離・はく落がありませんでした。対策の効果が証明されたことになるかと思います。日本全国でNATMトンネルが施工されていると思いますが、耐久性の高いトンネルとなるために、少しでもフィードバックをしていければと決意を新たにしました。群馬県のトンネルの試行工事や、熊本阿蘇のトンネルにも関わりますので、情報発信も含めて努力していきます。



というわけで、4日間の仕事でしたが、収穫も極めて大きく、様々な可能性も感じた出張となりました。

手間本さんとも話しましたが、「やっぱり人だ」ということです。

システムも大事だけど、やっぱり人、です。

いつもながらの結論ですが、結論は変わらない。いつまでもやり続けるのみ、です。


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