シャープ & ふらっと

半音上がって半音下がる。 それが楽しい、美しい。
思ったこと、感じたことはナチュラルに。  writer カノン

金井直 「木琴」

2006-05-18 17:27:05 | 音楽を聴く

妹よ
今夜は雨が降っていて
おまえの木琴が聞けない

おまえはいつも
大事に木琴を抱えて 学校へ通っていたね
暗い家の中でも おまえは木琴と一緒に歌っていたね

そしてよくこう言ったね
早く町に 赤や青や黄色の電灯がつくといいな

あんなにいやがっていた戦争が
おまえと木琴を 焼いてしまった

妹よ
おまえが地上で木琴を鳴らさなくなり
星の中で鳴らし始めてから まもなく
町は明るくなったのだよ

私のほかに 誰も知らないけれど
妹よ
今夜は雨が降っていて
おまえの木琴が聞けない



中学生の時、国語の時間で読んだ詩だ。
この詩は、合唱曲にもなっている。
詩の内容に、解説はいるまい。
綴られているそのままだ。

国語のテストでこの詩が出され、
いくつもの設問があった。
「なぜ雨の日に木琴が聞けないのか」
「早く電灯がつくといいな、と言う妹の言葉は、どういう意味か」
「私のほかに誰も知らない、とはどういう意味か」

この詩は、ストレートだ。
戦争で、妹を失った兄の詩である。
どういう意味もなにもない。
この詩で、問題は作ってほしくなかった。
中学生の時の思いである。

合唱曲の「木琴」は、
妹を想う静かなもの悲しさと、
戦争への怒りをうたう激しさで構成される。
この曲を聴けば、
国語の問題のナンセンスさの、解答が出てくる。

昨日、久しぶりにこの曲を聴いた。
今日の記事にしようと思い、
「金井直」という、この詩人を検索したが、
とにかく、これといった情報がない。
写真もなかった。

でも、この詩は胸を打つ。