GW。 京都で念願の写経をした。
写経。
言うまでもなく、心を落ち着かせ
筆で般若心経を書くという精神修行のひとつである。
般若心経は、実はすべて唱えられる私だが、
写経の経験は一度もなかった。
どうせなら、京都の寺でやってみたい。
その願いが叶った。
建仁寺。
臨済宗・栄西が開山した大本山である。
1202年、建仁2年に開創されたところからこの寺名になった。
清水寺や金閣寺といった観光名所ほどではないが、
京都最古の禅寺として有名である。
建仁寺は広い境内で、京都らしい威厳を保った寺だった。
受付で写経をしたい旨を言うと、
紙と筆ペン、見本に文鎮、ミニ電気スタンドを一式渡され、
写経道場なる部屋への案内図を持ち、その場所へ向かった。
GWだし、混んでて何時間も待つようだったら諦めようかと思ったが、
なんと私がこの日の最初の体験者らしく、
道場には誰もいなかった。
正座だと思っていたら、きれいな机とイスが用意してあった。
席は10席ほどの部屋だった。
「寒い部屋ですが、我慢して下さい」と受付で言われていたが、
それよりも、暗い部屋で文字が読み取れないほうが難儀だった。
薄く書かれてある般若心経を上からなぞるだけ、というもので
たいがいの寺の写経はこのタイプである。
しかし、その文字がはっきり読み取れない。
最初は丁寧になぞる事に集中したが、
三分の一くらい書いた所で40分ほど経過した。
だいたい全文書いて60~70分くらいとあったので、
時間を気にしながらになった。
ただ、そこからはなぞる事よりも
綺麗な楷書で書く事を心がけたら、割りとすんなり進んだ。
仕事で筆字を書くことも多いので、
途中からは普段の感覚で綴ることに専念した。
途中で親子連れが入ってきて書き始める。
お母さんと中学生くらいの娘さんだったが、
娘さんのほうはやはり、「字がわからない」と言いながら書いていた。
書いていて気づいたのは、
般若心経に一番多く出てくる文字は『無』であるようだ。
逆に最後のほうの『ぎゃてい』の字などは、般若心経以外でお目にかからない。
薄い下書き文字で、たしかに字がわからない。
とりあえず文字の間違いだけは気をつけて、なんとか書き終えた。
結局90分かかってしまった。
最後に願い事と名前、日付を書く。
『無病息災』と書いて、生まれて初めての写経は終了した。
書いた般若心経は、そのまま建仁寺に納められる。
それだけでも、大変な格式のある体験だ。
両親ともにいなくなってから、初めて訪れた京都。
京都が好きだった両親へ、少しだけ落ち着いた挨拶をする事ができた。
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