十年ほど前、奈良の有名ホテルでパンケーキを食べたら重曹?が掛かってきた。一口食べておかしな味がする。「なんだこれは」とウエイターに言うと知らないのかねという顔で「粉砂糖ですよ」と言う。ならおまえ食べて見ろと突っ返したら暫くして「申し訳ありませんでした。間違えました」と作りなおしたのを持ってきた。料理長が謝りに来るかと思いきや、フロア主任が平謝りなだけだった。
数年前、医師勉強会の納涼会で茶そばが出た、一口食べたら酸っぱい。なんだこれはと仲居を呼んで怒ったら、蕎麦つゆとポン酢を間違えたそうですとしれっとしている。板前を呼べと言いかけたが、何だか酸っぱいねと全部食べてしまったK先生を見ていたら怒る気が失せた。帰り際に見習い?板前が暖簾から首を出して「すいませんでした」と謝っていた。
人間は間違える。間違いには意外に大小は少なく似ているのだが、その結果は笑って済ませられるものから大惨事まで大きな差が出てくる。医療界ではヒヤリハットと間違い寸前の事例を集めて報告反省対策をとるシステムがあり、随分間違いは減ってきている。医師看護師育成の肝はヒットやホームランを打つことではなくエラーを減らすことにある。そして医師看護師に欠かせない資質は謙虚に反省し精進できる向上心があることのように思う。そしてきちんと注意しながら仕事ができるようになれば一人前だ。
果たしてドジを踏んだコックと板前は一人前になれただろうか?。