患者さんを診る医師になるにはどうしてもある期間の修行が必要だ。それは今でも変わらないと思う。恐らく殆ど全ての仕事で一人前になるにはそうした時期が必須と思う。所謂、天才と呼ばれる人達、長嶋釜本羽生イチロー井山そして飛ぶ鳥を落とす勢いの藤井にしても、並のプロとは違っても完全な独学ではないと思う。井山などは石井先生の指導が力あったのは周知の所だ。勿論、才能を引き出し磨いた側面が大きく指導とは少し違うかも知れない。しかし、それでも本からの知識や自己流の練習では一人前になるのは難しいと思う。
自分の仕事で言えば教科書からの知識ではどんな秀才でも、患者を前にすると何だか違うと感じて戸惑うはずだ。いいや俺は独力で一人前になったと威張る医師は相当な犠牲者を出しているはずだ。先輩というか直接の上司の指導というのは個性、実力差があるし相性もあるから反面教師になってしまう場合もあるが、直接先輩上司からでないと学べない部分は大きいと確信している。
人生に於いて上司の運不運は大きく、特に最初の先輩指導者はその後の仕事人生に影を落としたり光を与えたりする。
なぜそうなのか、私が思うに本から得た知識では分からない部分があるからだと思う。職種によって知識の占める部分の大きい小さいはあるにしても、現場実地で初めて分かる成る程というものがある。おそらくそれは言語化しにくい要素が仕事にはあるからだと思う。身体を使う場合だけでなく脳味噌を使う場合もだ。
勿論、薫陶というものもあり、それはじわりと効いてくる。