2024年8月19日
愛知労働局長
小林 洋子
愛知県知立市東栄3-1
全トヨタ労働組合
執行委員長 若月 忠夫
愛知地方最低賃金審議会の意見
「最低賃金1,077 円」に関する異議申出
いつも働くものの生活実態に目を向け、労働者の権利の身長のためにご尽力している貴職に敬意を表します。私たち全トヨタ労働組合は、愛知県のひいては全国の経済や労使関係にも多大な影響を与えているトヨタ自動車と関連企業に働く労働者によって作られた労働組合です。私たちの労働組合が、企業横断型で正規雇用も非正規雇用も含めて組織化をめざしていることから、最低賃金のあり方には強い意味で関心を持っています。そうした立場から、今回の「最低賃金の時給1077円」に関する異議申し立てをします。
1 労働者の生活実態を反映させていない今年度の最低賃金答申
現在の食品に限らず生活必需品全般にわたる物価上昇は、労働者をはじめとした私たちの庶民の生活を脅かしています。そもそも最低賃金の制定は、私たちの賃金など労働条件の改善に大きな影響を与えました。精一杯努力したという結果がわずか50 円の引き上げでは、生活改善にはつながりません。これまで私たちは今すぐ1,500 円以上の要求をしてきました。もちろん諸外国との比較からすれば、まだ1500円でも十分ではありませんが、それでも生活を改善し地域経済にも消費に好影響を与えます。最低賃金を支払い能力に限定し、生活給的視点が弱い答申には異議があります。
2 中小企業支援にも目を向けて
審議会では「50 円の引き上げ」に使用者代表と公益代表が賛成しました。しかし、今回は労働者代表が最後まで抵抗していますが、それは現在の国民生活を反映しています。私たちの周囲を見渡すと、生活が困窮するもとでは消費が進まず、経済も活性化せず、企業経営は厳しくなるばかりではないでしょうか。最賃の引き上げは賃金の底上げにつながります。企業経営に好影響をもたらすのではないでしょうか。1,077 円では生活改善につながりません。私たちの地域ではトヨタ自動車と関連企業の行方が大きな影響を与えています。大企業本位の企業社会、下請けいじめにも目を向け、中小零細企業にも光を当あて、援助をしていく道筋を示してください。この点でも不十分な内容です。政府・国に対しても中小零細企業への支援を積極的に呼びかけてください。
3 「最賃1,500 円」の世論をもっと真剣に受け止めてください
愛知の労働組合のセンターである愛労連は、今回の審議にあたり、「生活改善、地域経済の好循環のために、愛知県最低賃金を1,500 円とし、中小企業支援を求める要請」署名9,210 筆分、「最低賃金を時給1,500 円に!!」オンライン署名3,424 人分を最賃審議会会長と愛知労働局長に提出しました。1,500 円の根拠は、「愛知県最低生計費の推計(2023 年)」結果による科学的なものであるとともに、街頭で行ったシールアンケートでも84%が1,500 円以上を求めています。審議会ではこうした世論があることをどう受け止めるのかの審議が行われていません。労働者代表は審議のなかで、署名や意見書の1,500 円に触れ、連合のリビングウエッジの1,100 円を主張しました。
もっと、真摯に1,500 円、ただちに1,100 円の審議を行ってください。5日の審議会では「真摯な議論が行われた」と強調されましたが、違和感を持たざるを得ません。
4 審議の非公開部分について
今年度の審議会の専門部会では、第2回から4回で休会時間が5時間以上あり、その休会時間中に実質的な審議が行われました。しかも議事録すらありません。公開の場でもっと時間をとり、県内の使用者・労働者が納得のいく議論をすることが審議会と専門部会に課せられた責任ではないでしょうか。今年は人口流出問題でわずかながら議論されましたが、深めた議論とは言えません。さらなる議論を求めます。
5 最低賃金のボーダーにいる労働者の意見陳述は必要です。
今回も残念ながら労使委員の反対で意見陳述が実現しませんでした。今年はお隣の岐阜でも2団体、各10 分の意見陳述が行われました。私たちが提出した47 通の意見書について、わずか23 分の説明と労働者委員からの「意見書をふまえて」の発言だけに終わってしまいました。意見陳述の実施はもはや全国の趨勢であり、その場を作っていただくよう切望します。とりわけ労働者の中でも社会の存続に欠かせないエッセンシャルワーカーや派遣労働者や契約社員などの非正規労働者の生の声に耳を傾けることは大切なことです。審議会の審議の透明性と可視化は重要課題です。その実現のために貴審議会でも真摯な論議をして実現することを願うものです。
以 上