僕が小さいころ、母親が僕の似顔絵を定期的に描いていた。
その当時は、じっとしていないといけないその時間があまり好きではなく、いつもぶつぶつ文句を言いながら、母親の似顔絵描きに付き合っていたように思う。
別に絵が趣味であるというわけでもない母親が、なぜ僕の似顔絵だけを描きたがったのか、その頃は考えることもしなかった。
でも、今になって、ほんの少しだけ、なんとなくわかる気がする。
自分で描いた絵として、子供の成長を記録したい。
写真ではなく、親の目を通しての子供の姿として。
そこには僕も共感するので、僕も子供ができたら似顔絵を描きたいなー、と思っていた。
とはいっても、似顔絵が得意なわけでもなく、どっちかと言えば美術は好きだったけれど誉められた方ではなかった。
もうすぐ子供が産まれるし、その前に少しだけ練習をしておこう。
突如そう思い立ったので、鉛筆と練り消しゴムとスケッチブックを買ってきた。
いきなり他人を描くのも恥ずかしいので(というより下手に描いてお叱りを受けそう)、まずは自分の顔を鏡で見ながら描いてみた。
横顔はiPhoneで撮ったのを見ながら。
うーむ、なんというか、当たり前だけど、高校くらいから進歩がない…
練習すればうまくなるのかな?
まあ、いいや。
要は、自分の手で描くというのが目的なのだから。
似顔絵の腕も、子供と一緒に成長していけばいいのである。