キャラバン サライ

夢は大空へ、努力は足元で、世界に目を向けながら足元から子供たちを見直していきたいと思っています。

日本の戦後史

2013年06月10日 | Weblog
「日本戦後史」

今「歴史」がにわかにブームらしい。
そんな空気に乗るわけではないが、昔からから歴史が好きだ。
年代(数字)や人名(単語)を覚えるのは苦手だが、その時代の人たちがどんな生き方をし、どんなことを考え、それがどのような出来事につながったのか。
そんなことに漠然とした興味を感じる。
特に、ある地域と別の地域のつながり、あるいはある時代と別の時代の因果関係に興味がある。
ある人々の起こした出来事が、別の場所、別の時代にどのような影響を与えたか。
そして、それが僕らの生きる現代へどのようにつながってきたのか。

そうやって、メソポタミア文明から古代ギリシャ、ローマ帝国、中国文明、イスラム帝国、モンゴル帝国、中米の文明を追っていく。
ルネサンスが起こり、大航海時代につながり、産業革命、そして帝国主義(非常にヨーロッパ的な視点だ…)。
その結果、第一次大戦、第二次大戦が世界を包み、いよいよ現代へ、というところで僕の中の歴史はぷっつりと空白になる。
一番身近であるはずの、「戦後」がなぜか空白だ。

特に日本の戦後史について、恐ろしく無知だと思う。
一つの原因は、学校の歴史の授業で戦後というのは教科書の(当たり前だが)最後の最後に登場し、時間がないという理由でさらっと流されたから。

ただ、別の理由もある。
戦後史はまだ多くの人にとって歴史ではないのだ。
教える先生たち自身が自ら体験した経験であって、人に教えるような歴史ではない。
だから、戦後史というのは思い出話としては語られても、体系だった歴史として語られることが少ない。

そんなことにようやく気づいた。
そして、こんな直近に日本で起こった出来事を知らないことに焦りを感じた。
いくら戦国時代や幕末の出来事を知っても、現代に直結している戦後史を知らないでは、その出来事の現代への影響なんて知るべくもない。
いくら末端の手足を鍛えても、体の中心の体幹がふにゃふにゃでは力を全身に伝えられないように(いまいちなたとえだ)。

そんなことで、日本現代史の本を2冊ほど読んでみた。
案の定、というよりそれ以上の驚きをもって自分が本当に多くのことを知らなかったのだと分かった。

以下、名前だけは聞いたことがあっても中身を知らなかったもの。

五十五年体制
日教組
ハガチー事件
安保闘争国会突入
三池炭鉱労働運動
日韓基本条約
全共闘、内ゲバ、
日本赤軍、よど号事件、イスラエル空港での銃乱射事件
日本列島改造論
シーマ現象

特に以下は、僕には信じられないような、当時の日本の空気が痛いほどに伝わってくる出来事。

「教え子を再び戦場へ送るな」を合言葉にした日教組(日本教職員組合)は、文部省や教育委員会と全面的に対立。
1958年には文部省の弾圧に抗して東京都のほとんどの教員が一斉休暇という名のストライキを行ったが、結果的に全国で6万人もの教員が処分された。

1960年、アメリカ大統領補佐官ハガチーの乗った車が羽田空港前で安保反対の2万5000人の学生に取り囲まれ、ヘリコプターで救出された。

同じ年、安保反対の8000人の学生が国会を取り囲み、700人が国会に突入。機動隊との衝突で女子学生が亡くなった。

三池炭鉱労働運動では、同じ年、つるはしや木刀を持った2万人の労働者と武装した1万人の警官隊が、炭鉱の施設を奪い合うために大衝突を起こす寸前まで追い詰められた。
結果的に労働組合は会社に敗北するが、労働環境が悪化したことで458人が亡くなるという信じられない炭鉱爆発事故が起こった。

1972年、イスラエル空港で日本赤軍のメンバー3人が自動小銃を乱射し、24人が死亡した。日本赤軍はそれ以外でも、ハイジャック3回、製油所の爆破、3カ国の大使館占拠など世界中でテロ行為を繰り返した。


よく、1969年という年が象徴的な意味をもって語られるが、不思議なことにこの1960年代から1970年代は、若者が怒りまくって今では考えられないことをしていた。
今でもその理由ははっきりと定まっておらず、今後の研究課題なのだそう。
当時の若者(今の60代の方々)からすれば、僕ら現代の若者はなんて冷めているんだろうと思うかもしれない。

そんな、今風に言えば「ありえない」出来事を起こす時代の空気を作っていた人たちが、まだしっかりと生きて、一緒に生活をしている。
なんとも奇妙な気分で、それを歴史と言うには何か違うようにも思う。
当事者たちには、語りたくない時代もあって、あるいは自分のフィルターによって美化されていたりするんだと思う。
そして、そんな時代の空気と、その当事者たちによって、今の時代が運ばれてきた。

そんなことを考えていたら、ふっと自分も今の時代の空気を作り、未来へ運んでいる一人なんだと、はっとさせられた。