ヒガンバナは日本では帰化植物です。
原産地は中国です。
日本に分布するヒガンバナは、中国でコヒガンバナ(の祖先)から生じた3倍体のヒガンバナが救荒植物として有史以前に導入され、それが人手を介して全国に分布を広げたと考えられています。
中国では染色体が二倍体で種子ができますが、日本のヒガンバナはほとんどが三倍体で結実しません。
種子ができないので、球根(りん茎)で増やします。
日本のヒガンバナは、けれど、種子を作らないにも関わらず赤色のきれいな花を咲かせ、蜜を出してカラスアゲハなどの蝶の仲間を誘引します。
日本のヒガンバナの祖先(3倍体)は、核型をもとにした系統関係の解析から2倍体のコヒガンバナの祖先から染色体突然変異で生まれたと推定されています。
日本のヒガンバナが赤色の花をつけ、蜜を分泌するという性質は、現存のヒガンバナが継承していると推定されるコヒガンバナの祖先の性質を遺伝していることによると考えられます。
ヒガンバナ自身は たとえ3倍体になっても、蜜を出しチョウを誘う遺伝的性質は変わらず継承しているわけです。
ちなみに、彼岸花(曼珠沙華)のことを英語で「リコリス」と呼びます。
ところが、「リコリス」といえば、もうひとつの「リコリス」がありますね
これは日本語では「甘草(カンゾウ)」と訳され、お酒やシロップ、飲み薬なんかにもたまに含まれる調味料……というか薬草の一種の「リコリス」です。
「リコリス」といっても、彼岸花の方は「lycoris」、甘草の方は「liquorice」。
そもそもスペルから違うのです。
生薬としてのイメージが強い甘草(liquorice)ですが、実際は、生薬として使用されるよりも、甘味料として使用されることのほうが多いのです。(BATHCLIN 「実は最も身近な漢方「甘草(カンゾウ)」」より)
有毒植物のイメージが強い彼岸花(lycoris)ですが、たとえ種子はできなくとも甘い蜜を出す、その意味では もう一つの甘草なのかもしれません。
ヒガンバナ - 蜜はどこに?
以上、リコリスのお話でした
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