2024/12/13 読売新聞オンライン
現地の祠前で記念撮影する松浦貫主(右)と秋沢さん(スリランカ・クルネーガラで)
地蔵盆に参加した松浦貫主(手前右)
参加者らで大きな数珠をたぐる「数珠回し」
抹茶を楽しむ参加者ら
浴衣を着る体験も
大勢が参加した茶会
壬生寺貫主ら 現地で活動 日本語学校生ら招待 「生きた日本文化触れて」
地蔵信仰で知られる壬生寺(中京区)が、仏教国スリランカで京の夏の風物詩「地蔵盆」を続けている。現地の日本語学校の生徒や親のいない子らを招き、今年11月には4回目の地蔵盆を開催。法要を勤めた松浦俊昭貫主(57)は「大勢の人々でにぎわい、溶け込んできた。生きた日本の文化に触れてもらいたい」との願いを込める。
地蔵 菩薩の縁日にあたる11月24日(現地)、同国中部クルネーガラ郊外にある「スプートニク日本語学校」。松浦貫主ら僧侶3人が、壬生寺から持参した地蔵4体を納めた 祠ほこら の前で「般若心経」を唱えた。
人々は手を合わせて焼香した後、数人ずつで大きな数珠をたぐる「数珠回し」を体験。学校のホールでは茶会も開かれ、ようかんや抹茶を300人以上に振る舞った。浴衣体験や日本食の出店もあり、終日、「日本」を満喫してもらった。
きっかけは、松浦貫主とTBS元アナウンサーの秋沢淳子さん(57)との出会いだった。秋沢さんは一般社団法人「スプートニクインターナショナル」(東京)を創設し、私財を投じてスリランカに日本語学校や、身寄りのない女児の児童養護施設などを建て、支援活動に尽力してきた。
松浦貫主はある会合で秋沢さんと知り合い、活動に共感。「現地の子たちに本物の日本文化を見せてあげたい」との願いを受けて地蔵盆を提案し、2018年、寺の地蔵1体を手荷物で運んで初開催。コロナ禍の中断を経て続けてきた。
松浦貫主は「お地蔵さんは年齢や男女の区別なく救ってくださる仏様で、身寄りのない子たちが集まる場にふさわしい。数珠を回せば国境を越えて皆が一つになれる」と説明する。
大乗仏教とは異なる上座部仏教のスリランカでは、釈迦をまつるが、地蔵は見かけないという。それでも「毎朝、学校のお地蔵さんにお参りしているそう。日本よりも真面目」と笑う。
秋沢さんによると、日本語を学ぶ人が多い親日国で、地蔵盆の参加者も年々増えている。「スリランカはインドから伝わった仏教が昔の形のまま残っている。(伝わった)東端の日本から仏教の源流に里帰りしたようなイメージ」と話す。
松浦貫主は、地蔵をあと2体増やして「六地蔵」にしたいと願う。「同じ仏教国なので通じるものがある。地蔵盆を通じて日本とスリランカの架け橋になれれば」と期待を寄せる。