(フォーカス台湾2015/05/07)
今月8日で逝去から20週年を迎える台湾出身のアジアの歌姫、テレサ・テン。命日を前に生前の面影に触れようと、テレサ・テンが6歳から15、16歳まで過ごした台北郊外の蘆洲で、ゆかりの地を巡ってみた。
MRT三民高中駅。出口1が蘆洲小の最寄り。
テレサゆかりのスポットがあるのは台北メトロ(MRT)中和新蘆線の三民高中駅と終点・蘆洲駅の付近。台北市中心部からは約20分ほどで到着する。
まず訪れたのは、テレサの母校、蘆洲小学校。三民高中駅から徒歩5分ほどの場所にある。テレサを教えたこともある美術教師の廖漢権さんによると、テレサは小学生時代から歌だけでなく、演技の才能も飛び抜けており、演技中に本物の涙を流せるほどだったという。
蘆洲小
同校の校史室にはテレサに関する品が多数収められており、幼少期のテレサの姿を垣間見ることができる。ただし、残念なことに普段は一般公開されていない。
同校の構内は、週末の午前中など特定の時間にのみ市民に開放されている。テレサが小学生時代、記念撮影をした池は校舎の再建時に移動されたが、別の場所に同じ比率で再現されており、見学もできる。
校門には、5月下旬に東京で行われるメモリアルコンサートの旅行ツアー案内が貼られていた。
校史室に飾られるテレサ・テンの写真。右が幼少期に同小の池の前で撮影されたもの。(2011年撮影)構内の開放時間は同小のホームページに掲載されている。
蘆洲小から約50メートルほどの場所には、テレサが洗礼を受けたとされる新北市蘆洲セントヨゼフ教会(聖若瑟天主堂)もある。
教会前の中正路。写真の右側、国泰世華銀行の裏手あたりにテレサの旧家はあったという。台湾の町並みの移り変わりの早さを感じさせる。
現在ではすでに取り壊されているが、この教会の向かい側にあった路地の付近にテレサが暮らした家があった。
龍鳳堂餅舗
教会から中正路を東方面に約50メートルほど進むと、テレサが幼少期に家族とよくお菓子を買いに来ていた老舗中華菓子店「龍鳳堂餅舗」がある。
小トウ餅の味は5種類。イモやアズキ、カボチャなどの地元食材が餡に使われている。麗君餅の中身はシイタケ煮込み肉の餡。各30元
同店ではテレサの逝去10周年を記念して作られた「小トウ餅」や「麗君餅」が販売されており、人気を集めている。(トウ=登におおざと)
これらのスポットのすぐそばには、100年ほどの歴史を持つナイトマーケットもある。得勝街一帯にある蘆洲廟口夜市だ。子供の頃のテレサもこの付近で買い物をしたり、食事をしていたのであろうか。
蘆洲廟口夜市
出口1と2の真ん中あたりに建ち、駅を出入りする市民を見つめているよう。
続いては、1駅先の蘆洲駅へ。駅前の広場にはテレサ・テン記念像が設置されている。これは蘆洲駅開業後の2011年に建てられた。
日本語の解説文もある。
蘆洲微風園区。こんな風景をテレサも見ていたのだろうか。
蘆洲駅西側の淡水河堤防は、テレサが歌を練習していた場所。その場所はその後の工事により無くなってしまったが、河岸に立つとテレサが見ていた景色を感じられる。
楽器を演奏する人も。
現在、付近は微風運河パークとして整備され、週末になるとスポーツを楽しむ人などでにぎわう。演奏を披露する団体もあった。
テレサゆかりのスポット付近には観光名所も点在する。ゆかりの地巡りのついでにこれらを訪れてみるのもいいだろう。
湧蓮寺
得勝街に建つ湧蓮寺は、地元民からの信仰を集める歴史ある寺。豪華な装飾が目を引く。延平郡王や観世音菩薩、媽祖、土地公などが祀られている。
紫禁城博物館
同じく得勝街にあるもう一つの観光スポットが紫禁城博物館。同地の仏像彫刻家によって建てられた同博物館には、兵器や絵画、服飾品など中国の貴重な文物が展示されており、伝統彫刻技術の素晴らしさや文化伝承の意義を感じ取ることができる。
蘆洲李宅
蘆洲李宅(李友邦将軍紀念館)
地元の名家、李氏の邸宅で伝統的建築方式の三合院建築が特徴。国の三級古跡に指定されている。
切仔麺。具材はもやしやニラのみとシンプル。
蘆洲のグルメといえば「切仔麺」。切仔麺とは、黄みがかった麺を使ったシンプルな麺料理で、蘆洲が発祥の地とされている。街のあちこちでこの麺を売る店が見られる。
テレサ・テンは今も地元に愛されている。舟木稔氏提供
テレサが蘆洲を去ってから約46年。町は当時とは様変わりし、無くなってしまった場所も多くあったが、ゆかりの地を巡ってみると、テレサが今でも地元に愛され続けていることを感じた。蘆洲は台北市に比べると、下町情緒が色濃く残る。このような庶民的な町で生活していたテレサの様子を想像すると、より親しみが湧いてくる。これからも、テレサがこの地で生活した証を後代に引き継いでいってほしいと願うのであった。