先の週末に、東伏見のネット裏に懐かしい顔がありました。
今年卒業してメガバンクに就職したTくん(早実出身)です。
「お久しぶりです」と笑顔で挨拶してくれたTくんから、新入行員としての近況報告がありました。
Tくんが配属された支店は、大手企業がひしめく都心エリア。
まだ見習い中ですから、遅くまで残業するような状況にはなっていないようですが、「支店長から毎日のように勉強、勉強と言われて、大変です。野球漬けだった大学時代のツケが回ってきました」と彼は苦笑い。
都心の法人店舗では、洗練された金融知識を有するお取引先を担当することになります。
他の銀行や証券会社などの強力な競合先もひしめいていますから、銀行マンとして一人前に仕事ができるようになるまでには、大学での勉強以外にも膨大な業務知識が必要です。
学生時代に勉強しなかったことでは人後に落ちない私ですから、経験に裏付けされた実践的なアドバイスができたのではないかと思います。
(;^_^A
いずれにしても、勉強にいくらでも時間を割くことのできる独身の時に、厳しい環境の支店に配属されたことを、Tくんには幸運だと考えてもらいたいですね。
そして金融のプロとなるための基礎をきっちり築いてもらいたいと思います。
さて、今日の新聞で、東京都主導で発行された、中小企業263社の無担保社債を裏付けとする社債担保証券(CBO)160億円で、返済順位の低いトランチで約8億円の元本が償還されない見通しだとの記事がありました。
このCBOは返済順位に応じて4つのトランチに分けて2007年に発行され、返済順位の高い上位2つのトランチは全額償還されますが、三番目のトランチは約35%、四番目は0%の償還となるそうです。
この記事を読んで、様々な受けとめ方があると思いますが、私は次のように感じました。
まず、3年間で約5%の元本割れという償還実績は、発行後にリーマン・ショックという大津波に遭遇するという経済環境にあったことを考えると、とても良く吟味された中小企業向けの与信であった、
このディールを通じて、多くの中小企業に対して、低利で安定した資金供給を行うことができた
次に、償還リスクに応じたトランチ分けが、とても上手く機能していた証券化であった、
その一方、低位のトランチに対する発行時の格付けや値決め(利率)は、今となって振り返れば、かなり甘かったのではないかという印象を持ちます。
------------------
このCBOの2007年の募集時の条件は次のようなものでした。
A号(50億円、年利1.31%)
AAA(S&P)
Aaa(ムーディーズ)
B号(104億円、年利1.33%)
AAA(S&P)
Aaa(ムーディーズ)
C号(5億円、予定利率1.58%)
A(S&P)
A2(ムーディーズ)
D号(5億円、予定利率1.98%)
BBB(S&P)
Baa2(ムーディーズ)
ちなみにスタンダード&プアーズ(S&P)の格付けの定義は次のようなものです。
AAA
当該債務を履行する債務者の能力はきわめて高い。スタンダード&プアーズの最上位の個別債務格付け。
AA
当該債務を履行する債務者の能力は非常に高く、最上位の格付け(「AAA」)との差は小さい。
A
当該債務を履行する債務者の能力は高いが、上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化からやや影響を受けやすい。
BBB
当該債務履行のための財務内容は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって当該債務を履行する能力が低下する可能性がより高い。
--------------------
結果論となりますが、A号、B号のトランチを購入した投資家は、格付けに見合った資金運用ができましたが、C号、D号の投資家は、リーマンショック後の景気後退による中小企業の支払能力低下の煽りをモロに受け、年利0.6%程度の利回りの上乗せを追求したことが大きく裏目に出て、投資元本を失ったことになります。
1%に満たない金利差に、それほどのリスク差を読み取った投資家はどれほどいたのでしょうか。
ちなみに、このCBOの下位のトランチについては、格付機関が発行後に何度も格付を引き下げて、最後はCCというレーティングになってしまいました。
決して流動性が高くない証券について、発行後に格付をどんどん見直されてしまったら、投資家はたまったものではありません。
少しでも有利に証券を発行したいという、発行者側の意向に対して、格付機関がいかに中立でいることができるか。
格付機関の鼎の軽重が、今回も問われそうです。
しかし、リスクに見合う値決めをやろうにもやれない、超低金利の金融市場の問題が顕在化したとも言えます。
とても小さなスペースの新聞記事でしたが、個人的には、とても興味深いニュースでした。
今年卒業してメガバンクに就職したTくん(早実出身)です。
「お久しぶりです」と笑顔で挨拶してくれたTくんから、新入行員としての近況報告がありました。
Tくんが配属された支店は、大手企業がひしめく都心エリア。
まだ見習い中ですから、遅くまで残業するような状況にはなっていないようですが、「支店長から毎日のように勉強、勉強と言われて、大変です。野球漬けだった大学時代のツケが回ってきました」と彼は苦笑い。
都心の法人店舗では、洗練された金融知識を有するお取引先を担当することになります。
他の銀行や証券会社などの強力な競合先もひしめいていますから、銀行マンとして一人前に仕事ができるようになるまでには、大学での勉強以外にも膨大な業務知識が必要です。
学生時代に勉強しなかったことでは人後に落ちない私ですから、経験に裏付けされた実践的なアドバイスができたのではないかと思います。
(;^_^A
いずれにしても、勉強にいくらでも時間を割くことのできる独身の時に、厳しい環境の支店に配属されたことを、Tくんには幸運だと考えてもらいたいですね。
そして金融のプロとなるための基礎をきっちり築いてもらいたいと思います。
さて、今日の新聞で、東京都主導で発行された、中小企業263社の無担保社債を裏付けとする社債担保証券(CBO)160億円で、返済順位の低いトランチで約8億円の元本が償還されない見通しだとの記事がありました。
このCBOは返済順位に応じて4つのトランチに分けて2007年に発行され、返済順位の高い上位2つのトランチは全額償還されますが、三番目のトランチは約35%、四番目は0%の償還となるそうです。
この記事を読んで、様々な受けとめ方があると思いますが、私は次のように感じました。
まず、3年間で約5%の元本割れという償還実績は、発行後にリーマン・ショックという大津波に遭遇するという経済環境にあったことを考えると、とても良く吟味された中小企業向けの与信であった、
このディールを通じて、多くの中小企業に対して、低利で安定した資金供給を行うことができた
次に、償還リスクに応じたトランチ分けが、とても上手く機能していた証券化であった、
その一方、低位のトランチに対する発行時の格付けや値決め(利率)は、今となって振り返れば、かなり甘かったのではないかという印象を持ちます。
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このCBOの2007年の募集時の条件は次のようなものでした。
A号(50億円、年利1.31%)
AAA(S&P)
Aaa(ムーディーズ)
B号(104億円、年利1.33%)
AAA(S&P)
Aaa(ムーディーズ)
C号(5億円、予定利率1.58%)
A(S&P)
A2(ムーディーズ)
D号(5億円、予定利率1.98%)
BBB(S&P)
Baa2(ムーディーズ)
ちなみにスタンダード&プアーズ(S&P)の格付けの定義は次のようなものです。
AAA
当該債務を履行する債務者の能力はきわめて高い。スタンダード&プアーズの最上位の個別債務格付け。
AA
当該債務を履行する債務者の能力は非常に高く、最上位の格付け(「AAA」)との差は小さい。
A
当該債務を履行する債務者の能力は高いが、上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化からやや影響を受けやすい。
BBB
当該債務履行のための財務内容は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって当該債務を履行する能力が低下する可能性がより高い。
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結果論となりますが、A号、B号のトランチを購入した投資家は、格付けに見合った資金運用ができましたが、C号、D号の投資家は、リーマンショック後の景気後退による中小企業の支払能力低下の煽りをモロに受け、年利0.6%程度の利回りの上乗せを追求したことが大きく裏目に出て、投資元本を失ったことになります。
1%に満たない金利差に、それほどのリスク差を読み取った投資家はどれほどいたのでしょうか。
ちなみに、このCBOの下位のトランチについては、格付機関が発行後に何度も格付を引き下げて、最後はCCというレーティングになってしまいました。
決して流動性が高くない証券について、発行後に格付をどんどん見直されてしまったら、投資家はたまったものではありません。
少しでも有利に証券を発行したいという、発行者側の意向に対して、格付機関がいかに中立でいることができるか。
格付機関の鼎の軽重が、今回も問われそうです。
しかし、リスクに見合う値決めをやろうにもやれない、超低金利の金融市場の問題が顕在化したとも言えます。
とても小さなスペースの新聞記事でしたが、個人的には、とても興味深いニュースでした。