滋賀県は京都の隣なので祇園祭が近づいて来ると、関西のニュースやローカル番組なんかで「今日は宵々山ですね」「明日は宵山ですね」と、うきうきうっとりした目でブラウン管からキャスターが頷いたりしている。
京都、大阪、奈良、三重、福井、岐阜は意識の上では『運命共同圏内』かも。テャhンの話題でもちきりだったときも、「福井は原発あるし、警戒態勢はいってるで」となすすべもないが、一瞬の緊張感が走った。
そんな日々に、ふと子どもの頃に読んだ本をもう一度読んでみたくなり、職場の近くの図書館の蔵書をネット検索してあたりをつけ、仕事帰りに立ち寄って見つけた。
子どもの頃のと同じように、1冊の児童書としては見つからなかったけれど、学研の「現代日本の文学12/山本有三集」の中に入っていた。
読みたかったのは「戦争とふたりの婦人」。ここでの「戦争」は主に「南北戦争」である。アメリカ人のふたりの婦人の内、ひとりは『アンクル・トムの小屋』を書いたストウ夫人で、もう一人は教師、特許局の首席書記を経た後、戦場を駆け回り病傷兵を看護した、そして戦争で働き手を失った遺族たちのために尽力したクララ・バートンという人である。
私が夢中になったのは、主に後者、クララ・バートンだった。
クララは、それははにかみやで無口で臆病で人見知りで病弱で、家族に心配させまくった子どもだったのに、他人のためになることには、人が変わったようにはきはきと活発に動き、強い意思をもって行動した。一時は助からないと医者に言われた兄を2年間に渡るつきっきりの看病で回復させた強者である。
彼女同様、はにかみやで無口で臆病で人見知りで病弱だった私は、「もしかすると私も、こんな自分を乗り越えられるときが来るのかも?」と真剣に夢見ていた。
ある意味では乗り越えているかも。年とともに厚顔無恥で大胆不敵で体型も太っ腹だ。と、夫は言いそうだ。とくに否定はしないが。
話を戻そう。
なかでも好きな箇所は、ニューヨークの特許局の吏員の中に発明家のプランを巧みに横取りするものがいて、創案者は泣き寝入りしているという話を聞いたクララが悪事を一曹キべく、知り合いの議員の口利きで特許局に首席書記として入ったところ。
当然ながら吏員たちは「女のくせになまいきだ」「いきなり来て俺たちの上にすわるとは」と不満を爆発させ、一部の「横取り組」も甘い汁を吸うことができなくなり、いやがらせを開始する。
クララが出勤すると、吏員たちはずらりと廊下の両側に並んで、通り過ぎるクララを鼻で笑ったり、口笛を吹いたり、聞こえよがしにいやがらせを言ったりする。むかむか。元来がはにかみやのクララは、死ぬ気で人間トンネルを毎朝通る事になる。
しかし。
「発明者の権利を守るためには、絶対負けない!」と黙っていても気迫みなぎるクララの決然とした態度は、ほどなく吏員たちもよくわかったようだ。卑屈な嫌がらせに彼女が屈することはないと悟った吏員たちは、早朝出勤の労が報われない人間トンネル作戦を、自然消滅させてしまう。
すっかりおばさんになった今も、この場面を読んだ時は再びわくわくした。この後、クララは同時代のナイチンゲール以上の活躍をするのだが、私はなぜか特許局時代のクララの話がやたらに好きなのだ。
自分が信念をもってしっかりと立っていさえすれば、大丈夫。自分のために何かをするのはたかが知れているけど、他人のために何かをする時は自分の実力以上の信じられない力が出る事も、たぶんこの本で知ったのだと思う。読み取ったというよりは、感じたんだけど。
あと「女は嫉妬深くて陰湿」と、ほとんど「大奥イメージ」で言われたりするけど、いやいや男だって相当なものでは?と、この場面がインプットされている私は、疑いのまなざしで聞いていたのである。
京都、大阪、奈良、三重、福井、岐阜は意識の上では『運命共同圏内』かも。テャhンの話題でもちきりだったときも、「福井は原発あるし、警戒態勢はいってるで」となすすべもないが、一瞬の緊張感が走った。
そんな日々に、ふと子どもの頃に読んだ本をもう一度読んでみたくなり、職場の近くの図書館の蔵書をネット検索してあたりをつけ、仕事帰りに立ち寄って見つけた。
子どもの頃のと同じように、1冊の児童書としては見つからなかったけれど、学研の「現代日本の文学12/山本有三集」の中に入っていた。
読みたかったのは「戦争とふたりの婦人」。ここでの「戦争」は主に「南北戦争」である。アメリカ人のふたりの婦人の内、ひとりは『アンクル・トムの小屋』を書いたストウ夫人で、もう一人は教師、特許局の首席書記を経た後、戦場を駆け回り病傷兵を看護した、そして戦争で働き手を失った遺族たちのために尽力したクララ・バートンという人である。
私が夢中になったのは、主に後者、クララ・バートンだった。
クララは、それははにかみやで無口で臆病で人見知りで病弱で、家族に心配させまくった子どもだったのに、他人のためになることには、人が変わったようにはきはきと活発に動き、強い意思をもって行動した。一時は助からないと医者に言われた兄を2年間に渡るつきっきりの看病で回復させた強者である。
彼女同様、はにかみやで無口で臆病で人見知りで病弱だった私は、「もしかすると私も、こんな自分を乗り越えられるときが来るのかも?」と真剣に夢見ていた。
ある意味では乗り越えているかも。年とともに厚顔無恥で大胆不敵で体型も太っ腹だ。と、夫は言いそうだ。とくに否定はしないが。
話を戻そう。
なかでも好きな箇所は、ニューヨークの特許局の吏員の中に発明家のプランを巧みに横取りするものがいて、創案者は泣き寝入りしているという話を聞いたクララが悪事を一曹キべく、知り合いの議員の口利きで特許局に首席書記として入ったところ。
当然ながら吏員たちは「女のくせになまいきだ」「いきなり来て俺たちの上にすわるとは」と不満を爆発させ、一部の「横取り組」も甘い汁を吸うことができなくなり、いやがらせを開始する。
クララが出勤すると、吏員たちはずらりと廊下の両側に並んで、通り過ぎるクララを鼻で笑ったり、口笛を吹いたり、聞こえよがしにいやがらせを言ったりする。むかむか。元来がはにかみやのクララは、死ぬ気で人間トンネルを毎朝通る事になる。
しかし。
「発明者の権利を守るためには、絶対負けない!」と黙っていても気迫みなぎるクララの決然とした態度は、ほどなく吏員たちもよくわかったようだ。卑屈な嫌がらせに彼女が屈することはないと悟った吏員たちは、早朝出勤の労が報われない人間トンネル作戦を、自然消滅させてしまう。
すっかりおばさんになった今も、この場面を読んだ時は再びわくわくした。この後、クララは同時代のナイチンゲール以上の活躍をするのだが、私はなぜか特許局時代のクララの話がやたらに好きなのだ。
自分が信念をもってしっかりと立っていさえすれば、大丈夫。自分のために何かをするのはたかが知れているけど、他人のために何かをする時は自分の実力以上の信じられない力が出る事も、たぶんこの本で知ったのだと思う。読み取ったというよりは、感じたんだけど。
あと「女は嫉妬深くて陰湿」と、ほとんど「大奥イメージ」で言われたりするけど、いやいや男だって相当なものでは?と、この場面がインプットされている私は、疑いのまなざしで聞いていたのである。