花のたより☆山のふみ~青森県立名久井農業高等学校~

農業と環境の研究グループ「チームフローラフォトニクス」と弟分である「ハンターズ」の取組みを紹介します!

「道」

2020年03月12日 | 研究
この絵をご存知ですか。かの有名な日本画家、東山魁夷氏の代表作「道」です。
東山氏は何度か種差海岸を訪ねたことがあるそうですが
この絵はその時のことを思い出しながら描いた心象風景だといいます。
右の写真は現在の様子。描いた場所と同じアングルから見ていますが
明らかに風景が違います。訪ねた頃はまだ松が植栽されていない頃。
その後、防風林として赤松が植えられ、このように鬱蒼とした森になってしまったのです。
もうこのような状態は草原ではありません。
もちろんポリネーターのマルハナバチは棲めません。
したがってサクラソウだって繁殖できないのです。
でも震災から立ち直ったサクラソウは、フローラの調査によると株が増えています。
一見、良いことのように思われますが、実はそうでないことをフローラは突き止めます。
なんとハチがいないため、サクラソウは脇芽を伸ばして増えていたのです。
株が増えたように見えても枝を伸ばしただけ。つまりクローン繁殖です。
これでは遺伝的多様性がないため、いつしか寿命を迎えると
ごっそりと姿を消す運命にあるのです。
これを避けるには種子繁殖を復活させるしかありません。
つまり環境を整備してまたここにハチを呼ぶ必要があるのです。
しかしここは国立公園。これ以上は高校生には無理です。
そこでアジア国立公園会議や青森県への報告と提案を最後に
フローラはサクラソウ研究から撤退しました。
当時、いろいろお世話になった皆さんには心から感謝しています。
嬉しいことに現在、赤松の一部伐採が行われました。
土の中で長い間眠っていたサクラソウがいつか芽吹くとフローラは信じています。
まだご覧になったことのない方は4月下旬から5月上旬、ぜひ訪れて見てください。
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海に逃げるサクラソウ

2020年03月12日 | 研究
これは2014年に発表したサクラソウ研究の一部。
かつて種差海岸には右側の赤い楕円で囲んでいた辺りに
大きな野生サクラソウの自生地がありました。
今も昔もこの地域は馬産地ですが、
当時ここは広々した放牧地だったそうです。
サクラソウも花粉を媒介してくれるマルハナバチも明るい草原が大好き。
人の手の入らない原野ではなく、
馬によって適度に草を食べられた里山はまさに最適な環境だったのです。
ところがリゾート開発が盛んになると、
種差海岸の風が観光には邪魔になります。
そこでこの地域に赤松が大量に植えられました。
写真に見える松林がそれです。暗い森が嫌いなサクラソウは
そのためどんどん明るい海岸へと自生地が動いていきます。
ピンクの楕円形が今の自生地ですが、まるで逃げていくかのようです。
これは地域の方の聞き取り調査によって得たもの。
調査しているフローラに地元の方がいろいろ教えてくださいました。
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