教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

勇者=ニート仮説 (ドラクエIII)

2009-07-08 00:02:13 | オタネタ全般
ドラクエIIは由緒正しきロトの血をひいた王子・王女の物語である。
ドラクエIVは個性豊かなキャラクターたちによる熱きドラマの物語である。
ドラクエシリーズのほとんどはそんな感じに作られている。

ところが!

ドラクエIIIだけはそうではない。
勇者はともかくとして、勇者以外のメンバーはそれこそテキトーに酒場で見繕ってきたフツーの人たちである。
このフツーの人たち個々にはドラマが全くないし、このフツーの人たちは作中では一言も話さない(商人だけ少ししゃべる)。
そう、ドラクエIIIだけは、フツーの人が伝説の英雄となれるたった1つの物語なのである。

さて、フツーのひと扱いではない勇者をみてみよう。
オープニングで母と王が勇者に語りかけるセリフは次のようになっている。



それは○○が16才になるたんじょう日のことであった。


「おきなさい。おきなさいわたしのかわいい○○や。
「おはよう○○。もう朝ですよ。
「今日はとても大切な日。○○が王さまに旅立ちのゆるしをいただく日だったでしょ。
「この日のためにおまえをゆうかんな男の子に育てあげたつもりです。
「さあ母さんについていらっしゃい。
  ・・・
「ここからまっすぐいくとアリアハンのお城です。王さまにちゃんとあいさつするのですよ。さあいってらっしゃい。


「よくぞ来た! ゆうかんなるオルテガの息子○○よ!
「すでに母から聞いておろう。
「そなたの父オルテガは戦いのすえ火山に落ちてなくなってしまった。
「しかしその父のあとをつぎ旅に出たいというそなたの願いしかと聞きとどけたぞ!
「そなたならきっと父の遺志をつぎ世界を平和にみちびいてくれるであろう。
「敵は魔王バラモスじゃ!
「世界のほとんどの人びとはいまだ魔王バラモスの名前すら知らぬ。
「だがこのままではやがて世界は魔王バラモスの手に……。
「それだけはなんとしてもくいとめねばならぬ!
「○○よ! 魔王バラモスをたおしてまいれ!
「しかしひとりではそなたの父オルテガの不運をふたたびたどるやも知れぬ。
「町の酒場で仲間をみつけそこで仲間たちのそうびをととのえるがよかろう。
(○○は50Gと武器防具をうけとった!)
「ではまた会おう! ○○よ!



これだけ見ると、カンペキなまでに優秀な騎士の家系に生まれ将来を約束された出世頭の若者であるとしか見えない。
勇者は特別な人なのかのように見える。

しかし!

ドラクエIII以外では勇者でなくてもメンバーには特別なストーリーが用意されていて、みなが勇者でなくても特別な人たちである。
逆説的に考えると、ドラクエIIIは勇者だけが特別あつかいなこと自体がアンバランスではなかろうか、とも思える。

わたしは、ドラクエIIIでは勇者もフツーの人だという仮説を立ててみた。
以下に、その仮説を前提に、裏事情をイロイロと勘ぐってツジツマを合わせてみようと思う。



ドラクエIIIでは16歳になると朝おきた瞬間に勇者になる。
そして勇者は1人しかいない。

勇者はだれしもがなれないような特別な職業か?
たしかにそうだ。
他の職業では相互に転職できるようになっている。
転職したらレベル1にもどってしまうが、まえの職業でおぼえた技術(魔法とか)は決して忘れない。

勇者へは他の職業からは決して転職できない。
そして、勇者も他の職業へは決して転職できない。

実はこれに隠されたナゾを解くヒントが隠されているのではなかろうか?

隠されたナゾとはつまり、勇者=ニート仮説である。

16歳になるまで就業もせず学業もせず家でプラプラしていると、じつは自動的に勇者に割り振られるのではなかろうか。
16歳になるまでに職業訓練や高等教育を受けたものだけが、戦士や僧侶や魔法使いといった職業につけるのではなかろうか。

事実、職業訓練や高等教育を受けていないと思われる勇者は、ほかのどの職業へも転職できない。
そして自分の経歴をパーにしようとするヤツはいるはずもなく、わざわざ戦士や僧侶や魔法使いから家でプラプラしていたという烙印を捺される勇者へ転職しようとするものもいない。

そもそもニートを勇者と呼ぶこと自体、うまいこと社会問題のスケープゴート化できているような気がする。
ニートと呼べば聞こえが悪いが、勇者と呼ぶとなんとなくひとかどの人物っぽく聞こえてしまうからだ。
ようはあれだ、ニート=自宅警備員みたいな呼びかただ。

ひょっとするとアリアハンでは、
「奥さんちょっと聞いて、オルテガさん家の息子さん、やっぱり勇者になったそうよ」
「まー、やっぱりね。オルテガのダンナさんって、覆面にパンツ1枚でウロウロするような、ちょっとアレな方(※1)でしょ。その息子さんなら勇者でもしかたないわね」
「でしょー。奥さんとこの息子さん、立派な僧侶になられたそうで良かったですわね~」
なんていう井戸端会議が行われているかもしれない。

中世の多くの国では、奴隷のような安価な労働力をふんだんに使える場合をのぞくと、多くの場合は市民のなかに大量の無産者を養えるほど経済が豊かではなかったであろうと思われる。
現代がこれだけ豊かなのは、化石燃料や化学肥料や農薬や品種改良によって農業生産性が飛躍的に向上したことの影響が極めて大きい。
そんな現代にくらべれば、人手でチマチマ生産していた中世では、一般人では衣食住の費用をのぞいたらほとんど何ものこらないのはアタリマエだ。

そこへきてニートである。
働かないと食えないという経済事情により、ニートは犯罪により生活の糧にする確率が増すであろう。

国王だったらこの問題をどうするか?
職についていない者は強制労働させるなり何なりの手段を講じたくなる。

そこでアリアハン国王は妙手を思いついたのだ。
ひとつは先に述べたように、ニートを「勇者」という隠語で呼ぶこと。
もう1つは勇者に世界を救うという使命を与えること。

考えてみればこのやりかたは巧妙にできている。
ニートは勇者となり、ニートではなくなる。
勇者はバケモノ退治に行く事になるので、GDPに寄与しそうにない国民を国外にほうり出せる。
そしてアリアハン周辺は敵キャラも弱く、城外へ追放したところですぐに生命の危機に瀕するような事態にもならず、だから周辺各国から「非人道的だ!」と内政干渉を受けることもない。
勇者がうまく成果をあげさえすれば、それを指揮したアリアハン国王の名声も広まる。

さらにうまいことに、ドラクエの世界ではモンスターを倒すと換金性が発生する。
ようするに、たとえばキメラを殺傷して翼をもぎとって帰れば、道具屋の店頭に並ぶような立派な金銭的価値が生まれるということだ。
だから勇者たちは城外追放されても生活に困窮するほどにはならない。
1日に1人あたり数匹のスライムを殺傷してさえいれば、とりあえず毎日宿屋に泊まれるくらいの稼ぎにはなるからだ。
(アニメのドラクエ(アベル版)では、宝石をもちいてモンスターを製造しているため、モンスターを倒すと宝石にもどるという設定により、モンスター殺傷と換金のツジツマをあわせている。ひょっとするとこちらが正しいかも?)



さて、さきのオープニングの母と王のセリフの裏をとってみよう。


> それは○○が16才になるたんじょう日のことであった。

勇者確定という悲しき現実がはじまる日のことであった。


> 母「おきなさい。おきなさいわたしのかわいい○○や。

16歳の息子にこんなことを言ったら、ふつう息子はあきれるかムッとする。
あえてこんな事を言うからには、なにか特別なことを予感させるではないか。
たとえば今日から城外追放になってしまうとか。


> 母「今日はとても大切な日。○○が王さまに旅立ちのゆるしをいただく日だったでしょ。

キホン的にお役所仕事であり、勇者として城外活動するにしても国の許可を取り付けねばならんのだろう。
きっと勇者は「かったりー」とか「アホくさ」とか思っているに違いあるまい。


> 母「この日のためにおまえをゆうかんな男の子に育てあげたつもりです。

「りっぱな勇者に」とは言わないところが哀愁をそそる・・・。


> 王「よくぞ来た! ゆうかんなるオルテガの息子○○よ!

なんという社交辞令(笑)。


> 王「○○よ! 魔王バラモスをたおしてまいれ!

ということで城外追放されましたとさ。


> ○○は50Gと武器防具をうけとった!

生活に困る人のための給付金?


> 王「ではまた会おう! ○○よ!

いろんな政治的な思惑がうまいこと成功して、きっと国王は上機嫌にちがいあるまい。



【※1 オルテガ】
http://www.youtube.com/watch?v=Mf4yVs6Mt8Q&feature=related
↑こんなひと