あらかじめ断っておくが・・・
わたしはリアルタイムに真空管があった太古の昔を生きていたほど年寄りではない。
しかし!
なぜか、トランジスタより先に真空管を触って遊んでいた。
大学時代のことである。
あたりまえだが、今とはってはわざわざ真空管を使おうとでもしないかぎり、真空管を使う機会などまず無い。
真空管を必要とする用途なんて、ギターアンプなど趣味の世界を除いたらほぼ壊滅したと言ってもいいからだ。
(大電力のマイクロ波を出す用途にだけまだ使われている。たとえば電子レンジとか。)
だから今、電子回路をやってみようという人たちにとっては、とりあえずトランジスタを扱ってみるしか選択肢がないのである。
というか、そんなことは今あらためて言うほどのことでもないな。
ところが!
トランジスタは大変敷居が高い。
真空管をあつかうことよりも格段に敷居が高い。
じつは真空管のほうが遥かにカンタンだ。
だから、電子回路をやってみようという人たちにとって、いまの時代はかなりとっつきが悪く、始めのほうでコケて入って来れない事態に陥っている。
幸か不幸か、わたしはトランジスタより先に真空管を触る機会に恵まれた。
だから電子回路の世界に入ってこれた。
今日はそんなわたしが真空管から入ることについてのメリットを語りたい。
(なんだかいつもより前置きが長くなったな~、、、まあいっか。)
①
トランジスタは値段が安い。
単品のトランジスタなら30円くらいから買えるし、最先端のLSIなら中にトランジスタが数十億個も入っているから1個あたりの値段に換算したらとんでもなく安い。
それに対して真空管は高い。
ふつうに買ったら最低でも1000円くらいはする。
ということは、素子をたくさん使って高性能な回路を作るという選択肢が取れないというシバリが発生する。
製品を作るという観点からすれば、他社との差別化が難しくなるという意味において、これはかなり痛いシバリだ。
だが!
逆に勉強がてら試しに遊んでみるというレベルでいえば、真空管の回路ほうが部品点数がかなり少ないので理解しやすい。
わたしがはじめてトランジスタか真空管を触ってみようと思ったとき、回路図を見比べて真空管のほうがカンタンそうだと思ったから真空管から入ったという理由もある。
当時のこの判断はあながち間違ってはいなかったと、今でもそう思う。
この判断のおかげで電子回路の世界に入ってこれたからだ。
②
トランジスタと真空管のどちらが壊れやすいかというと、そりゃー真空管のほうが壊れやすい。
真空管時代のTVやラジオなんて、真空管が故障してときどき取り替えなければならないのはアタリマエだったのだ。
ところが!
トランジスタは短時間でも定格オーバーしたらすぐ壊れるのに対し、真空管は短時間の定格オーバーにはめっぽう強い。
だから間違って配線して動かなかった場合、真空管回路ならばすぐ電源落とせばまだ壊れていないケースが多々ある。
これはトラブルシュートの腕前が未熟なうちは大変助かる。
なぜなら、間違って配線したから動かないのか、間違って配線して部品が壊れたから動かないのか、その切り分けをしなければならないのはけっこう厳しいものがあるからだ。
③
トランジスタにはnpnというタイプとpnpというタイプの2種類がある。
どう違うかを説明しはじめると長くなるから省略するが、使う側の観点からすればnpnは入力より出力のほうが電圧が高くなり、pnpは入力より出力のほうが電圧が低くなる、という制約がある。
その両方をうまいこと直結してつかえば、入出力で同じくらいの電圧で動かすことができるようになるというメリットが出てくる。
ところが!
真空管にはnpnに相当するものしかない。
(小難しくいうと、真空中をホールが飛んでいくなんて事はない、というのでこれを説明できる。)
真空管では直流から増幅できるアンプを作ろうとすると、かなりめんどくさいことになるということを表している。
(実際に回路図を書けるようになって試しに設計してみるとそのめんどくささが良くわかるのだが・・・)
というか、キホン的には真空管では直流から増幅できる回路構成には普通しない。
じつはこれには副次的なメリットがある。
回路と回路が直流的につながっていないので、どっかの回路の動作点がおかしかったとしても、それが回路全体には波及しない。
ということは、どこがおかしいのかの特定が非常にカンタンなのだ。
これはトラブルシュートの腕前が未熟なうちは大変助かる。
トランジスタの回路だとカンタンに直結で回路を組めるかわりに、どっか1箇所がおかしかったら全部がまるごと動かなくなる。
どこかがおかしいのは解るが、どこがおかしいのかが解らなくてお手上げ、そんな感じになりやすいのがトランジスタ回路の欠点だ。
④
トランジスタがなぜ動くのかを説明するのは案外めんどくさい。
量子力学やら材料物性やらも絡むからなおのことめんどくさい。
実際に回路屋でもバイポーラトランジスタやFETの動作を説明せよと言われて、それをちゃんと答えられるヤツは案外少ないだろうと思う。
それに比べれば真空管のほうが動作を説明しやすい。
ということは理解の助けになる。
それにpnpのほうが一般には頭のなかで動作を考えにくいので、その意味でも真空管のほうが楽に理解できる。
それに、ゼロからスタートするより、真空管を理解したあとにトランジスタを理解しようとするほうが遥かにカンタンだ。
⑤
真空管は機械的構造物なので眺めていて楽しいし、電源入れて光らせると嬉しくなる。
トランジスタはそういう楽しみ方をする要素がない。
アマチュアのうちは作って楽しいということが大変重要だ。
⑥
初学者にとって、電圧より電流のほうが理解しづらい。
キホン的に電流で動くトランジスタは初学者にはつらいものがある。
ところが!
真空管回路の場合はむりやりでも電圧だけで考えることが可能なのだ。
はじめて回路を設計してみようという場合には真空管を使うほうが敷居が低いのだ。
⑦
最近の部品はどんどん小型化が進んでいるのは御存知のとおり。
もちろん良いことだ。
しかし!
自分でハンダ付けしようとする立場のものからしたら、ハンダ付けがどんどん難しくなることを意味している。
たぶん50代の技術屋のほとんどの人は1005のチップ部品を自分でハンダ付けしきれないと思う。
それにくらべて真空管はデカい。
もちろん技術的には悪いことだ。
しかし自分でハンダ付けするなら真空管はデカいからカンタンなのだ。
ハンダ付けでミスってどうにもならんということは真空管のほうが起こりにくい。
はじめて自分で作ってみて動かなかったら、かなりヘコんでしまいヤル気を無くす。
そういう意味でも真空管から入るメリットは大きい。
わたしはリアルタイムに真空管があった太古の昔を生きていたほど年寄りではない。
しかし!
なぜか、トランジスタより先に真空管を触って遊んでいた。
大学時代のことである。
あたりまえだが、今とはってはわざわざ真空管を使おうとでもしないかぎり、真空管を使う機会などまず無い。
真空管を必要とする用途なんて、ギターアンプなど趣味の世界を除いたらほぼ壊滅したと言ってもいいからだ。
(大電力のマイクロ波を出す用途にだけまだ使われている。たとえば電子レンジとか。)
だから今、電子回路をやってみようという人たちにとっては、とりあえずトランジスタを扱ってみるしか選択肢がないのである。
というか、そんなことは今あらためて言うほどのことでもないな。
ところが!
トランジスタは大変敷居が高い。
真空管をあつかうことよりも格段に敷居が高い。
じつは真空管のほうが遥かにカンタンだ。
だから、電子回路をやってみようという人たちにとって、いまの時代はかなりとっつきが悪く、始めのほうでコケて入って来れない事態に陥っている。
幸か不幸か、わたしはトランジスタより先に真空管を触る機会に恵まれた。
だから電子回路の世界に入ってこれた。
今日はそんなわたしが真空管から入ることについてのメリットを語りたい。
(なんだかいつもより前置きが長くなったな~、、、まあいっか。)
①
トランジスタは値段が安い。
単品のトランジスタなら30円くらいから買えるし、最先端のLSIなら中にトランジスタが数十億個も入っているから1個あたりの値段に換算したらとんでもなく安い。
それに対して真空管は高い。
ふつうに買ったら最低でも1000円くらいはする。
ということは、素子をたくさん使って高性能な回路を作るという選択肢が取れないというシバリが発生する。
製品を作るという観点からすれば、他社との差別化が難しくなるという意味において、これはかなり痛いシバリだ。
だが!
逆に勉強がてら試しに遊んでみるというレベルでいえば、真空管の回路ほうが部品点数がかなり少ないので理解しやすい。
わたしがはじめてトランジスタか真空管を触ってみようと思ったとき、回路図を見比べて真空管のほうがカンタンそうだと思ったから真空管から入ったという理由もある。
当時のこの判断はあながち間違ってはいなかったと、今でもそう思う。
この判断のおかげで電子回路の世界に入ってこれたからだ。
②
トランジスタと真空管のどちらが壊れやすいかというと、そりゃー真空管のほうが壊れやすい。
真空管時代のTVやラジオなんて、真空管が故障してときどき取り替えなければならないのはアタリマエだったのだ。
ところが!
トランジスタは短時間でも定格オーバーしたらすぐ壊れるのに対し、真空管は短時間の定格オーバーにはめっぽう強い。
だから間違って配線して動かなかった場合、真空管回路ならばすぐ電源落とせばまだ壊れていないケースが多々ある。
これはトラブルシュートの腕前が未熟なうちは大変助かる。
なぜなら、間違って配線したから動かないのか、間違って配線して部品が壊れたから動かないのか、その切り分けをしなければならないのはけっこう厳しいものがあるからだ。
③
トランジスタにはnpnというタイプとpnpというタイプの2種類がある。
どう違うかを説明しはじめると長くなるから省略するが、使う側の観点からすればnpnは入力より出力のほうが電圧が高くなり、pnpは入力より出力のほうが電圧が低くなる、という制約がある。
その両方をうまいこと直結してつかえば、入出力で同じくらいの電圧で動かすことができるようになるというメリットが出てくる。
ところが!
真空管にはnpnに相当するものしかない。
(小難しくいうと、真空中をホールが飛んでいくなんて事はない、というのでこれを説明できる。)
真空管では直流から増幅できるアンプを作ろうとすると、かなりめんどくさいことになるということを表している。
(実際に回路図を書けるようになって試しに設計してみるとそのめんどくささが良くわかるのだが・・・)
というか、キホン的には真空管では直流から増幅できる回路構成には普通しない。
じつはこれには副次的なメリットがある。
回路と回路が直流的につながっていないので、どっかの回路の動作点がおかしかったとしても、それが回路全体には波及しない。
ということは、どこがおかしいのかの特定が非常にカンタンなのだ。
これはトラブルシュートの腕前が未熟なうちは大変助かる。
トランジスタの回路だとカンタンに直結で回路を組めるかわりに、どっか1箇所がおかしかったら全部がまるごと動かなくなる。
どこかがおかしいのは解るが、どこがおかしいのかが解らなくてお手上げ、そんな感じになりやすいのがトランジスタ回路の欠点だ。
④
トランジスタがなぜ動くのかを説明するのは案外めんどくさい。
量子力学やら材料物性やらも絡むからなおのことめんどくさい。
実際に回路屋でもバイポーラトランジスタやFETの動作を説明せよと言われて、それをちゃんと答えられるヤツは案外少ないだろうと思う。
それに比べれば真空管のほうが動作を説明しやすい。
ということは理解の助けになる。
それにpnpのほうが一般には頭のなかで動作を考えにくいので、その意味でも真空管のほうが楽に理解できる。
それに、ゼロからスタートするより、真空管を理解したあとにトランジスタを理解しようとするほうが遥かにカンタンだ。
⑤
真空管は機械的構造物なので眺めていて楽しいし、電源入れて光らせると嬉しくなる。
トランジスタはそういう楽しみ方をする要素がない。
アマチュアのうちは作って楽しいということが大変重要だ。
⑥
初学者にとって、電圧より電流のほうが理解しづらい。
キホン的に電流で動くトランジスタは初学者にはつらいものがある。
ところが!
真空管回路の場合はむりやりでも電圧だけで考えることが可能なのだ。
はじめて回路を設計してみようという場合には真空管を使うほうが敷居が低いのだ。
⑦
最近の部品はどんどん小型化が進んでいるのは御存知のとおり。
もちろん良いことだ。
しかし!
自分でハンダ付けしようとする立場のものからしたら、ハンダ付けがどんどん難しくなることを意味している。
たぶん50代の技術屋のほとんどの人は1005のチップ部品を自分でハンダ付けしきれないと思う。
それにくらべて真空管はデカい。
もちろん技術的には悪いことだ。
しかし自分でハンダ付けするなら真空管はデカいからカンタンなのだ。
ハンダ付けでミスってどうにもならんということは真空管のほうが起こりにくい。
はじめて自分で作ってみて動かなかったら、かなりヘコんでしまいヤル気を無くす。
そういう意味でも真空管から入るメリットは大きい。