現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

椎名誠「黄金時代」

2018-04-24 14:05:29 | 参考文献
 作者の夥しい作品群の中では、純文学的な位置を占める作品です。
 中学三年から写真大学に入学したあたりまでの5、6年間を、作者の最大の武器である緻密な記憶力で描き出しています。
 作者のこの時代については、いろいろなエッセイやユーモア小説で度々描かれているので、エピソード自体にはあまり新鮮味はないのですが、それをストイックなまでに自意識をむき出しにして書いているのが他の作品にはない魅力になっています。
 主人公の年齢で言えば、この作品は児童文学ならばヤングアダルト物にあたります。
 そういった作品のにつきものの恋愛や性体験なども出てくるのですが、そうしたものよりも喧嘩や肉体労働が物語の中心になっているのは、作者の青春が軟派よりも硬派的な要素が強かったことによるのでしょう。
 酒や煙草を日常的にのんでいて、喧嘩に明け暮れているのに、主人公(作者)に崩れたものを感じないのは、それと並行して肉体労働や自分のやりたいこと(写真など)に真摯に向き合う姿がしっかりと描かれているからでしょう。
 こうした青春時代は、作者のその後の活躍の土台になっていて、いろいろな作品で多くの読者を引きつけているのだと思われます。

黄金時代 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋
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藤野可織「ちびっこ広場」爪と目所収

2018-04-24 08:50:33 | 参考文献
 若い母親と7歳の息子の結びつきについて描いた作品です。
 この本に入っている他の二編と違って、あまりにも普通の書き方の平凡な作品なので驚かされました。
 もっとも、この短編は他の作品より四年も前に書かれたものなので、その間に作者は変貌を遂げたのでしょう。

爪と目
クリエーター情報なし
新潮社
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