現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

藤野可織「爪と目」爪と目所収

2018-04-23 08:37:03 | 参考文献
 第149回芥川賞の受賞作です。
 若い作者らしい新しい魅力を持った短編です。
 三歳の女の子を主人公にして、母親の事故死の後に、父親の不倫相手の若い女と共棲するといった非常に今日的な状況が描かれています。
 精緻な文章、無機質な人間関係、あっさりしすぎるほど簡単に結びつく男女、ブログやネットショッピングなどの新しい風俗の取り扱い方、衝撃的な結末など、優れた点はたくさんあるのですが、児童文学を書く上で特に刺激になったのが視点の取り方です。
 この作品は、主人公の一人称(わたし)で書かれているのですが、もちろんそれだけでは成立しないので、二人称(あなた)も用いられ、さらに三人称(神の視点)も含めて立体的に描かれています。
 これから児童文学を書いていく上では、子どもの視点だけでなく大人の視点も取り入れて描かないと、現代的な問題は捉えきれないでしょう。
 そういった意味では、これからのリアリズムの(現代)児童文学を書く上で、この作品はおおいに参考になります。

爪と目
クリエーター情報なし
新潮社


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