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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「エビータ」

2006-04-16 18:31:18 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Evita)96年作品。御存知アンドリュー・ロイド・ウェバーによる有名ミュージカルの映画化。

 監督がアラン・パーカーだと聞いたとき“ああ、予想はついたぜ”と思ったのは私だけだろうか。パーカー監督が地元イギリス以外で撮った映画ってのは“鼻持ちならない英国野郎”というレッテルそのまんま当てはまる。「ミシシッピー・バーニング」しかり、「エンゼル・ハート」しかり。南米を舞台にした本作も同様で、この全然パッションを感じられないような語り口は“こんな田舎娘に翻弄されるようなアルゼンチン人ってどうしようもないね”という差別意識だけを印象づけられたような、まことに困った映画になっている。

 独裁者の妻であるヒロインが国民の人気を集め、若くして死んだとき盛大な国葬が催されるが、その実彼女は思慮に欠ける俗物だった・・・・という斜に構えたモノローグが“語り手”のアントニオ・バンデラスによって披露され、映画はそれによって進行する・・・・。

 でも、だから何だってんだよ。瞬間風速的な人気を得る政治家ってのはロクな奴がいないってこと、誰でも知ってるじゃないか。叩けば埃の出る身体で、それでも表面だけ取り繕って、たまたまボロの出ないうちに早々と退場したから、美化されたイメージだけが残ったと。それだけの話なんだよ。そんなアタリマエの筋書きを大仰にカネかけてミュージカルにしちゃって、さも重大なことのようにガナリ立てて、最後に“だから南米人はダメなんだ。その点、我々イギリス人は・・・・”なんて見え透いた皮肉を飛ばしたくてたまらない感じだ。どこがいいんだこんな映画。

 やたら長い上映時間と一本調子の音楽にも閉口した。マドンナは熱演だけど、皮肉なことにマドンナというキャラクターが強烈なため、映画自体がプロモーション・ビデオの寄せ集めみたいな印象が強くなる。これじゃ公開当時にアカデミー賞の主要部門からすべて締め出されたのも当然か。ダリウス・コンディのカメラだけは良かったけどね。
コメント
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