(原題:Acta General de Chile)87年スペイン作品。監督のミゲル・リティンは、75年の南米チリのクーデターの際、九死に一生を得て亡命したチリの映画作家である。このフィルムはその彼が変装し、名前まで変えてクーデター後のチリの状況をつかむため潜入していったときの記録だ。
ハッキリ言ってこの映画は迫力が違う。恐怖政治で知られたピノチェト政権下でのゲリラ撮影。ヘタすると命はない。全篇ピーンと張りつめたせっぱつまった雰囲気は観る者をイッキに引き込んでしまう。
映画はまず首都サンチアゴの貧民街の状況を写し出す。近代的な表通りから一歩入っただけで貧しい住民の悲惨な生活環境を目の当たりにすることができ、この国のゆがんだ政治体制が浮き彫りにされる。
それと目を奪うのはチリ北部の硝石の採掘現場の描写で、荒涼とした大地の中にぽつんと建っている今はもう訪れる人もない廃坑を広角でとらえたカメラワークが素晴らしい。こんな映像を観ていると、たび重なる政変によってチリの民衆・文化がどのように変わっていったかが伝わってきて、ある種の戦慄を覚えてしまう。
クライマックスは当時のアジェンデ大統領の友人・知人らによる証言とニュース・フィルムとの合成によるクーデターの再現であるが、この映画の成功の要因はそれよりも民衆の目から見たチリの状況を丹念に描いた前半部分にあるといってもよい。それによって愛する祖国にあえて“潜入”しなければならなかった作者の悲しみが伝わってくるのである。
それと作者がクライマックスに持ってきたかったクーデターの再現部分がいくぶん演出過多で劇映画風になっていたのに対し、対象をありのままに写した前半部分が説得力を持ってしまったことは、ドキュメンタリー映画の演出の難しさ、面白さを如実にあらわしていて興味深いものがある。
ハッキリ言ってこの映画は迫力が違う。恐怖政治で知られたピノチェト政権下でのゲリラ撮影。ヘタすると命はない。全篇ピーンと張りつめたせっぱつまった雰囲気は観る者をイッキに引き込んでしまう。
映画はまず首都サンチアゴの貧民街の状況を写し出す。近代的な表通りから一歩入っただけで貧しい住民の悲惨な生活環境を目の当たりにすることができ、この国のゆがんだ政治体制が浮き彫りにされる。
それと目を奪うのはチリ北部の硝石の採掘現場の描写で、荒涼とした大地の中にぽつんと建っている今はもう訪れる人もない廃坑を広角でとらえたカメラワークが素晴らしい。こんな映像を観ていると、たび重なる政変によってチリの民衆・文化がどのように変わっていったかが伝わってきて、ある種の戦慄を覚えてしまう。
クライマックスは当時のアジェンデ大統領の友人・知人らによる証言とニュース・フィルムとの合成によるクーデターの再現であるが、この映画の成功の要因はそれよりも民衆の目から見たチリの状況を丹念に描いた前半部分にあるといってもよい。それによって愛する祖国にあえて“潜入”しなければならなかった作者の悲しみが伝わってくるのである。
それと作者がクライマックスに持ってきたかったクーデターの再現部分がいくぶん演出過多で劇映画風になっていたのに対し、対象をありのままに写した前半部分が説得力を持ってしまったことは、ドキュメンタリー映画の演出の難しさ、面白さを如実にあらわしていて興味深いものがある。