(原題:White Squall)96年作品。1960年、シェルダン船長(ジェフ・ブリッジス)を擁する帆船アルバトロス号は12人の訓練生とともに8か月間の練習航海に旅立つ。だが、何とか目的を達して帰路についた彼らをバミューダ沖で待っていたものは伝説の嵐、“ホワイト・スコール”であった。実際の海難事故をもとにしたスペクタキュラーな大作。
製作当時としては珍しく、監督リドリー・スコットは正攻法のドラマ作りに腐心している。仲間を失ったシェルダンの無常感や、この若さで修羅場を見てしまったクルーたちの事故後の虚脱感などの辛口でやや斜に構えたモチーフはそこそこに、実際スクリーンの大半を占めるのは、若きイノセントな訓練生たちのまさに“友情・努力・勝利”といった青春ドラマだ。
少年たちはキチンと描き分けられている。無理解な両親に欝屈した思いを抱いていたり、兄弟を亡くした精神的外傷に苦しんでいたり、高所恐怖症だったり、いくら勉強しても成績が上がらず悩んでいたりetc.いくぶん図式的とはいえ、若さゆえの苦悩を大自然に立ち向かうことにより克服していくプロセスは見ていて気持ちがいい。非常に丁寧に描かれており、若手俳優たちも好演だ。ガラパゴスの無人島に上陸して“まさにホメーロスの気分を味わった”とモノローグが入る。狭い“自己”から無限の大海原に乗り出す、青春時代特有の甘酸っぱい高揚感が広がるこのシーンはホントに感動的だ。
そしてクライマックスのホワイト・スコール襲来の場面はR・スコットの演出力が全開し迫力満点である。大波を受けて転覆し、一回転して一時浮上するもののついに犠牲が出てしまうという、見せ場の段取りは巧い。SFXも万全だ。そして昨日まで一緒に航海していた仲間を無慈悲に奪われる悲愴感が強調されるが、そこには“人生の無常”的なシニカルな視点はなく、死んだ彼らも精いっぱい生きたのだというポジティヴなスタンスが貫かれている。それは事故後の諮問会での生臭いパワープレイも、主人公たちの一途さにより吹き飛ばされ、爽やかな幕切れとなっていることでも明らかである。
それにしても実に映像の美しい作品であることよ。ラストのスティングによるテーマ曲も良い。
製作当時としては珍しく、監督リドリー・スコットは正攻法のドラマ作りに腐心している。仲間を失ったシェルダンの無常感や、この若さで修羅場を見てしまったクルーたちの事故後の虚脱感などの辛口でやや斜に構えたモチーフはそこそこに、実際スクリーンの大半を占めるのは、若きイノセントな訓練生たちのまさに“友情・努力・勝利”といった青春ドラマだ。
少年たちはキチンと描き分けられている。無理解な両親に欝屈した思いを抱いていたり、兄弟を亡くした精神的外傷に苦しんでいたり、高所恐怖症だったり、いくら勉強しても成績が上がらず悩んでいたりetc.いくぶん図式的とはいえ、若さゆえの苦悩を大自然に立ち向かうことにより克服していくプロセスは見ていて気持ちがいい。非常に丁寧に描かれており、若手俳優たちも好演だ。ガラパゴスの無人島に上陸して“まさにホメーロスの気分を味わった”とモノローグが入る。狭い“自己”から無限の大海原に乗り出す、青春時代特有の甘酸っぱい高揚感が広がるこのシーンはホントに感動的だ。
そしてクライマックスのホワイト・スコール襲来の場面はR・スコットの演出力が全開し迫力満点である。大波を受けて転覆し、一回転して一時浮上するもののついに犠牲が出てしまうという、見せ場の段取りは巧い。SFXも万全だ。そして昨日まで一緒に航海していた仲間を無慈悲に奪われる悲愴感が強調されるが、そこには“人生の無常”的なシニカルな視点はなく、死んだ彼らも精いっぱい生きたのだというポジティヴなスタンスが貫かれている。それは事故後の諮問会での生臭いパワープレイも、主人公たちの一途さにより吹き飛ばされ、爽やかな幕切れとなっていることでも明らかである。
それにしても実に映像の美しい作品であることよ。ラストのスティングによるテーマ曲も良い。