元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「きけ、わだつみの声」

2008-12-05 06:35:01 | 映画の感想(か行)
 95年作品。戦没学生の手記に題材を取った「きけわだつみの声」(50年)の再映画化だが、内容は前作とまったく異なっている(らしい)。現代の国立競技場でラグビーの練習をしていた大学生(緒方直人)が、戦時中に学徒動員で出征した当時のラグビー部員たちの霊魂に導かれ戦争を体験するという、「ウィンズ・オブ・ゴッド」に続く“戦争タイムスリップもの”(?)で観る前は多少ウンザリしたことは確か。だが、そこは早坂暁の脚本と出目昌伸の演出。とりあえず最後まで観ていられた。

 感想だが、“文部省特選”らしく実にソツがなく手際のいい演出のテンポで、太平洋戦争の“入門編”みたいな印象を受けた。ただ、それ以上の感慨は得られない。オリジナリティの欠如。作者の確信犯ぶりがどこにも見当たらない、平板な時間が流れるだけである。

 「プラトーン」の上官殺し、「炎628」の現地人虐殺、「ハンバーガー・ヒル」の無謀な突撃、「野火」の人肉食いetc.「独立愚連隊」の生き残りみたいなのが出てきたり、「英霊たちの応援歌」や「零戦燃ゆ」などと似た展開も目立つ。要するに、過去の戦争映画のハイライト・シーンの寄せ集めだ。笑ったのが冒頭近くの“わが国はアメリカや中国と戦闘状態に・・・・”というセリフ。当時は“中国”なんて言うものか。“支那”だろ“支那”。こんなとこに気を遣ってどうするんだ。

 何やら“こういう映画が作りたい”という意志よりも“欠点をひとつずつ潰してとりあえず無難に仕上げたい”気持ちの方が強いように思われる。こんな映画はいらん。製作当時は戦後50年記念映画として封切られたが、この程度のものしか送り出せない邦画界は悲しい。ヘンに色目使って総花的にお茶を濁しているから、こういうネタに関しては他のアジア映画に負けるのだ。いい子ぶった映画しか作れないなら最初から撮らないでほしい。極右でも極左でもいいから“あの戦争はオレはこう思う。文句あるか”というような破天荒で悪意に満ちた、そして面白い戦争映画が日本ではできないものなのか。
コメント
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