元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「山形スクリーム」

2009-08-12 06:13:48 | 映画の感想(や行)

 竹中直人の“わかる人にしか分からない悪ふざけ”にノレるかどうかで作品の評価が決まってくる。私はといえば、けっこう楽しんだクチだ(笑)。竹中は監督として今まで5本もの映画を手掛けているが、いずれも個人的には評価出来ない内容だった。だが今回の作品は幾分マシだと思う。

 それは、今までの諸作で職業的な映画監督として力量が不足していることを露呈させた彼にとって、残された唯一の道に脇目もふらずに邁進しているからに他ならない。その“唯一の道”とは何かというと、芸人としてのネタを映画全体で全面展開させることだ。かつて滝田洋二郎監督が竹中主演で撮った「痴漢電車 下着検札」と同じ方法論である(笑)。

 山形県の山深い村で平家の落ち武者の亡霊が復活。たまたま歴史研究部のフィールドワークで村に来ていた女子高生グループとのバトルが展開するというストーリーは、まるであって無いようなもの。全編これ一発系ギャグとキャストの悪ノリが延々と続く。しかもそれは40代以上の観客じゃないと絶対に分からないようなレトロな内容と、楽屋落ちと、コアな映画ファン以外は理解不能のマニアックなものがえらく多い。しかも徹底的にベタで、少しでもソフィスティケートしようとした形跡は皆無。

 本作に対して否定的な評価を下す者は“対象者限定の独りよがりの自己満足映画だ!”とでも言うのだろうが、私は逆に“オレってこれしか出来ないんだよ!”といった作者の開き直りが感じられて苦笑しつつも納得してしまった。竹中自身が落ち武者の一人として出演し、胃のもたれるような濃い演技をすれば、温水洋一だの由紀さおりだのといった脇役もアクの強さ全開。さらにはマイコのハジけたパフォーマンスには絶句する。

 しかし、決してドラマが空中分解しないのは、映画のまん中に成海璃子をもってきた御陰である。珍しく実年齢と同じ役柄に扮している彼女だが、他の3人の女子高生役(紗綾、桐谷美玲、波瑠)が今風のスポーティな雰囲気であるのに対して、成海は(体重面でも ^^;)重量感たっぷりだ。周りがどんなにフザけていてもブレないのである。逆に言えば、彼女を画面の中央に据えておけば、どんな無茶も出来るということだ。以前の「罪とか罰とか」と同じコンセプトである(爆)。

 栗コーダーカルテットによる音楽も快調だが、準主役の若造を演じたAKIRAとかいうのがEXILEのメンバーであることにはビックリした。ミュージシャンの映画進出としてはマーケティング面で“成功”しているのかどうかは不明だが(笑)、なかなかコアなキャスティングではある。
コメント
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