元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「G.I.ジョー」

2009-08-18 06:31:43 | 映画の感想(英数)
 (原題:G.I.Joe: Rise of Cobra)子供っぽい映画だ。確かに、予告編でもフィーチャーされていたパリの街を舞台にしてのチェイス場面は凄い。完全武装した車で逃げる敵を、ハイパー・スーツを着て超人的身体能力を得た主人公たちが必死に追うシークエンスは、活劇のアイデアに富み、素晴らしい盛り上がりを見せる。エッフェル塔があえなく倒壊する映像にも度肝を抜かれた。しかし、本作で観る価値があるのはこの部分だけなのだ。

 まず、世界の平和を守る国籍を超越した秘密部隊というのが、非常にクサい。別に荒唐無稽でも構わないのだが、少しは背景の説明がないと地に足が付かない絵空事になってしまう。この組織はどういうバックグラウンドを持っているのか、各国の軍隊をも上回るハイテク装備はどこから調達するのか、そしてどういう活動指針で出動するのか、それらがまったく分からない。



 いかに敵がワールドワイドに暗躍する悪の結社であろうとも、それを取り締まるのが国籍無視の武装集団でなければならない道理はない。通常の軍事機関で十分なはずだ。そのあたりの事情を明示(あるいは暗示)してもらわないと、小中学生を除いた観客は納得できないだろう(笑)。

 何より萎えるのは、敵味方共に装備するメカ類と(パリ市街戦を除く)戦いの段取りがすこぶる幼稚なところだ。ほとんどテキトーに作ったようなデザインのメカが、安手のテレビゲームみたいな稚拙な動きを繰り返すのみ。展開も行き当たりばったりにガチャガチャと進むだけで、メリハリなど皆無。続編を作る気マンマンのラスト処理なんて、あまりの白々しさに溜め息が出た。



 キャラクター面でも印象に残る奴は見当たらない。アメリカ軍からこの特殊組織に移った若造二人組(チャニング・テイタム、レイチェル・ニコルズ)が一応主人公なのだが、こいつらに魅力はない。他の面子も含めて、頭はカラッポで脊髄反射だけで動き回るような軽い連中ばかり。わずかに興味を引いたのがイ・ビョンホン扮する敵方の“忍者”である。デタラメな造型ながらこの俳優の意外な身体能力を確認できる。ただし、東京を舞台にこいつの子供時代を描いたパートはハリウッド名物“えせ日本”が全開(爆)。ユーモアもないので笑いも取れず、気勢のあがらない結果に終わっている。

 監督が「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」などのスティーヴン・ソマーズなので、観る前は“お手軽映画とはいっても、そんなにヒドくはないだろう”と予想していただけに、観賞後の脱力感は大きい。アラン・シルヴェストリによる御立派な音楽も虚しく響く。
コメント
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