(原題:E LA NAVE VA)83年作品。巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の最後期の映画だ。1914年、第一次大戦勃発前夜を舞台に、世紀の大ソプラノ歌手の遺骨を海に葬送するために出航した船、そこに乗り合わせた人々を描く群像劇である。製作はフランコ・クリスタルディ、原案と脚本はフェリーニとトニーノ・グェッラ、撮影はジュゼッペ・ロトゥシノ、音楽はジャンフランコ・プレニツィオ、編集はルジェ・マストロヤンニが担当。
冒頭の部分は良かった。セピア調のモノクロ画面によるサイレント方式で始まる。映画の時代背景の雰囲気を出すとともに、フェリーニ独特の嫌味のないハッタリが漲っている。続々と集まってくる乗客の描写も楽しい。オペラ関係者はもちろん映画俳優やオーストリアのヘルツォーク大公など、それぞれの大仰な造形が興趣を誘う。手際の良いカット割りも言うことなしだ。反面、貧しい港湾労働者も対比して捉えているのは、どこか旧作「青春群像」のテイストが見え隠れする。
しかし、感心したのはここまでだ。航海が始まると弛緩したエピソードの連続で観ていて眠くなる。セルビアの難民が乗り込んできたり、オーストリア=ハンガリー帝国の軍艦から砲撃を受けたりと、何とか見せ場を作ろうとはしているものの、さっぱり盛り上がらない。
公開当時の評論家の意見に“船のマストに吊るされた犀の映像が凄い”というのがあったように記憶しているが、それがどうした。まったく大したことがない。今までのフェリーニの作品には、これより素晴らしい画面造形がいくらでもあったはずだ。くだんの評論家はそれを忘れているのだろう。
そして極めつけはもうヤケクソとばかりに撮影現場を映してしまう終盤だ。見た目には“ははあ、こういう仕掛けか”とは思うが、それが何か映画自体の面白さに貢献しているかというと、何もない。それ以前に、まったくフェリーニらしくない。残念ながら作者の“老い”ばかりを見せつけられる寂しい映画と言うしかないだろう。
冒頭の部分は良かった。セピア調のモノクロ画面によるサイレント方式で始まる。映画の時代背景の雰囲気を出すとともに、フェリーニ独特の嫌味のないハッタリが漲っている。続々と集まってくる乗客の描写も楽しい。オペラ関係者はもちろん映画俳優やオーストリアのヘルツォーク大公など、それぞれの大仰な造形が興趣を誘う。手際の良いカット割りも言うことなしだ。反面、貧しい港湾労働者も対比して捉えているのは、どこか旧作「青春群像」のテイストが見え隠れする。
しかし、感心したのはここまでだ。航海が始まると弛緩したエピソードの連続で観ていて眠くなる。セルビアの難民が乗り込んできたり、オーストリア=ハンガリー帝国の軍艦から砲撃を受けたりと、何とか見せ場を作ろうとはしているものの、さっぱり盛り上がらない。
公開当時の評論家の意見に“船のマストに吊るされた犀の映像が凄い”というのがあったように記憶しているが、それがどうした。まったく大したことがない。今までのフェリーニの作品には、これより素晴らしい画面造形がいくらでもあったはずだ。くだんの評論家はそれを忘れているのだろう。
そして極めつけはもうヤケクソとばかりに撮影現場を映してしまう終盤だ。見た目には“ははあ、こういう仕掛けか”とは思うが、それが何か映画自体の面白さに貢献しているかというと、何もない。それ以前に、まったくフェリーニらしくない。残念ながら作者の“老い”ばかりを見せつけられる寂しい映画と言うしかないだろう。