元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「サム&ミー」

2011-03-08 06:32:22 | 映画の感想(さ行)
 (原題:Sam & Me )91年作品。伯父を頼ってインドからカナダへとやってきた青年ニキール。彼は、医療会社社長の父親サムの世話係という職にありつく。変わり者のユダヤ老人とインドの若者は、やがて文化や年齢を超えた友情で結ばれるが、周囲の無理解が思わぬ結末を生んでしまう。

 偏屈な年寄りが異人種の世話役によって心を開く、というストーリーでまず思い出すのがアメリカ映画「ドライビング・MISS・デイジー」だが、老人ホームで幸せにボケさせてしまう「ドライビング・・・」と比べて、この作品は実にシビアーかつ老人問題の本質を突いている。

 平和を求めてイスラエルから移住したものの、望郷の念がつのり奇行に走る老人を金のことしか考えない家族はやっかい者扱いする。彼を理解できるのは同じ異邦人のニキールとその仲間だけだ。立派な施設と行き届いた世話だけでは老人を幸せにすることができない。心の触れ合いこそ大切だ、というあたりまえの主張がまったく押し付けがましくなく、観る者に迫ってくる。

 展開はコミカルなところもあり、退屈しない。移民ばかり住んでいる主人公のアパートの描写など見事だ。バックに流れるジャズがクールな雰囲気をかもし出している。また、シビアな結末は悲痛である。

 監督は主人公と同じくインドからカナダに移住してきた女流のディーパ・メータ。これが長編第二作になり、その後も順調にフィルモグラフィを重ねているようだが、残念ながら本作も含めて多くは日本では一般公開されていない(私はこの映画は91年の東京国際映画祭で観ている)。
コメント
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