(原題:団圓 APART TOGETHER )卓越した脚本が、作品のテーマを浮き彫りにする。歴史に翻弄されて別々に生きることになった男女と、現代の世相とを並立させることによって、家族の幸せの意味を改めて考えさせる、なかなかの秀作だと思う。
第二次大戦後に上海から台湾に渡った元国民党兵士のイェンションは、大陸に戻れずに妻と生き別れになってしまう。彼はそのまま台湾で家庭を持ち、40年の歳月が流れる。やっと“里帰り”が許され、イェンションは今は上海で新しい家庭を持っているユィアーを訪ねることになる。すでに台湾での伴侶を亡くし、隠退生活に入った彼は余生を“本当の妻”であるユィアーと共に暮らすために、彼女を連れて帰るつもりなのだ。ユィアーの夫のシャンミンは、事情を知りつつも精一杯にイェンションをもてなすのだった。
誰が悪いわけでもない。愛し合っている者達でさえ、簡単に引き裂かれるような厳しい時代だった。何度も登場する食事の場面は、各人のセリフよりも饒舌だ。今のユィアーの子供達は、当然の事ながら母親が台湾に行ってしまうことに反対する。ただ、狭い家の中で食卓を囲み膝突き合わせて言い合いをするうちに、相手の心情というものを徐々に理解していく。
自分の立場に固執するだけでは何も解決しない。大事なのは、全体的な幸せがどのように上手く“配分”されていくかだ。さらに本作の巧妙なところは、ユィアーの孫娘のドライな視点を挿入させ、物語を“引いて”眺めるようなスタンスをセッティングしていることだ。対象に接近しすぎず適度な距離を置くことによって、終盤の思いがけない展開の伏線としている。
激しい時代の流れに巻き込まれたシャンミンたちの世代に対し、現代において家族を離反せしめるものはいったい何なのか。作者の真摯な問題提起が光る。ラスト近くの扱いなど、小津安二郎作品を想起させるほどだ。
ワン・チュエンアンの演出は実に粘り強い。長回しで捉えた食卓の風景は登場人物に安易な“逃げ場所”を与えず、事態に向き合う覚悟を包み隠さず活写する。リン・フォン、リサ・ルー、シュー・ツァイゲンといったキャストは達者で、直截的ではなくどちらかといえば抑えた演技なのだが、それだけ登場人物の心情を浮き彫りにさせることに成功している。上海の下町の風情も捨てがたい。2010年ベルリン国際映画祭で脚本賞を獲得しているが、それも納得出来るほどの質の高い作劇だ。