(原題:The Company of Strangers)90年作品。バスの事故で山深い森の中に取り残された老女8人の共同生活を描く。監督はカナダのシンシア・スコットだが、この人については私はまったく知らない。キャストも同様に馴染みのない名前ばかりが並ぶ。しかし作品自体のレベルはけっこう高く、これは思いがけない才能だと感じた。
別にドラマティックな出来事があるわけではない。森の中の廃屋での登場人物たちの暮しをカメラは静かに追うだけである。彼女たちの会話、クセや表情から一人一人が歩んで来た人生を浮き彫りにする。最初は見ず知らずだった彼女たちが次第に連帯感を深め、年をとったことに対する絶望・諦めなどから解放されていく過程がしみじみと感動的に、しかもユーモラスに綴られる。老人を主人公にした映画ではマーク・ライデル監督の「黄昏」(82年)を想起させる秀作だと思う。
演技していることを全く感じさせない自然体の出演者たちがいい。会話のシーンがいつの間にか登場人物に対するインタビューのような形になり、若い頃の写真がカットバックで挿入される。平凡な老人に見えても決してその人生は平凡ではない。いや、ドラマティックではない人生なんて本当は存在しないのではないか、という作者の主張が伝わってくる。全体的に実験的とも言える手法を駆使しながら、肌触りは暖かく深い余韻を残す映画である。
目にしみるカナダの自然の風景の美しさ。シューベルトやモーツァルトなどの室内楽を中心とした音楽もセンスがいい。誰にでも薦められる作品である。
別にドラマティックな出来事があるわけではない。森の中の廃屋での登場人物たちの暮しをカメラは静かに追うだけである。彼女たちの会話、クセや表情から一人一人が歩んで来た人生を浮き彫りにする。最初は見ず知らずだった彼女たちが次第に連帯感を深め、年をとったことに対する絶望・諦めなどから解放されていく過程がしみじみと感動的に、しかもユーモラスに綴られる。老人を主人公にした映画ではマーク・ライデル監督の「黄昏」(82年)を想起させる秀作だと思う。
演技していることを全く感じさせない自然体の出演者たちがいい。会話のシーンがいつの間にか登場人物に対するインタビューのような形になり、若い頃の写真がカットバックで挿入される。平凡な老人に見えても決してその人生は平凡ではない。いや、ドラマティックではない人生なんて本当は存在しないのではないか、という作者の主張が伝わってくる。全体的に実験的とも言える手法を駆使しながら、肌触りは暖かく深い余韻を残す映画である。
目にしみるカナダの自然の風景の美しさ。シューベルトやモーツァルトなどの室内楽を中心とした音楽もセンスがいい。誰にでも薦められる作品である。