まあまあ良かった。監督の三宅喜重はテレビ出身の演出家であるせいか、語り口が平坦で底が浅く、それでいて説明過多だ。映像面でもパステル調の色遣いで小綺麗にまとめてはいるが、奥行き感に乏しい。本来ならば凡作で片付けてしまいたいエクステリアなのだが、話の内容はけっこう面白い部分が少なくない。キャストも万全だ。トータルで見て“中の上”といったところか。観賞後の印象もそう悪いものではない。
有川浩のベストセラー「阪急電車」の映画化で、阪急電鉄の支線を舞台に、それに乗り合わせた人々の人間模様と哀歓を描く。阪急阪神ホールディンググループが全面バックアップしており、全編“本物”のロケーションだ。それぞれのエピソードが最初は独立しているようでいて、映画が進むに連れて互いにクロスしていく。そのタイミングは結構巧みだが、それは脚本の非凡さと言うよりもたぶん原作の手柄だろう。
結婚寸前に婚約者を職場の後輩に寝取られてしまい、腹いせに花嫁よりもゴージャスな衣装を着て披露宴に出席する女の話は、なかなか楽しめた。単なる復讐談ではなく、実行したはいいがやがて自己嫌悪に囚われ、途中で一人去るしかないのが泣かせる。さらに、会場を後にする彼女に式場担当者が声を掛けるというくだりも秀逸で、ささくれ立った心をポジティヴな方向に振らせる切っ掛けとして機能させるあたりが心憎い。
地方から関西の有名大学に進学するが、周りに馴染めない男女学生同士の出会いを描いたパートも好きだ。手探りで自分達の立ち位置を確認しようとする、青春期特有の甘酸っぱさが前面に出ていてアピール度が高い。手作りのオブジェ(?)を嫁に押しつける食えない老女とその孫娘との関係性も楽しめる。
ただし、傍若無人な“関西マダム”連中と付き合うハメになった主婦の話や、交際相手からの暴力に悩まされる女子大生のエピソードは、あまり展開に工夫がなく冗長な印象を受ける。さらに、脳天気な年上の彼氏と付き合っている女子高生を取り上げたパートや、イジメに苦しむ小学生の話はつまらない。
特にイジメられる子供に対して“挫けないで生きましょう”みたいなことを言うのは絶対に禁物だ。子供というのは表面上は強がっていても中身は脆かったりする。私だったら“辛かったら学校なんか行かなくて良い”とでも言うだろう。
とはいえ中谷美紀をはじめ、南果歩や玉山鉄二、勝地涼、谷村美月などの演技派を揃え、珍しく老婆役に徹した宮本信子やワンポイントリリーフの安めぐみや大杉漣、さらには人気子役の芦田愛菜まで出てくるのだから、画面はなかなか賑やかだ。そして一番印象に残ったのが、戸田恵梨香の素晴らしい脚線美(笑)。見ていて惚れ惚れしてしまった。今後も出し惜しみなんかしないで欲しい(爆)。