猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

海洋天堂

2015-10-30 05:10:50 | 日記
2010年の中国・香港合作映画「海洋天堂」。
47歳の水族館職員・ワン・シンチョン(ジェット・リー)は、自閉症と重度の知的障害を
持つ21歳の息子・ターフーを男手ひとつで育ててきた。ある日、シンチョンは自分が
癌に侵され余命わずかであることを知る。自分の死後のターフーの生活を案じた
シンチョンは、ターフーを連れて海で心中を試みるが、泳ぎの得意なターフーに助け
られてしまう。命を取り留め考えを改めたシンチョンは、ターフーを受け入れてくれる
施設探しに奔走し、残されたわずかな時間で、服の脱ぎ方やバスの乗り方といった
生活の術をひとつひとつ彼に教え始める。

ジェット・リーがアクションを封印して演じた人間ドラマである。地味な物語だが、出
演者たちの素晴らしい演技によって、感動的な作品に仕上がっている。ジェット・リー
があんなに優しい目をしていたなんて。いや、彼はアクション映画の時でも、ブルー
ス・リーみたいな鋭い目つきではない。それで凄いアクションをこなすのだから、本当
に魅力的な俳優だと思う。この映画では普通のおじさんというか、普通のお父さんを
演じていて、とても良かった。知的障害のある息子・ターフー、シンチョンとターフーを
いつも気にかけていて、シンチョンに恋心を抱いている近所の女性、水族館の館長、
皆良かった。
中国には成人の障害者施設というものはないのだろうか。ターフーは養護学校を
卒業しているが、年齢を理由にどこの施設からも断られてしまう。日本にはたくさん
あると思うのだが。施設に電話をかけまくるシンチョンの姿は悲しい。
水族館で生き生きと泳ぐターフー、子供の頃母親によく海に連れていってもらって
いたターフー、海で心中しようとするシンチョン。水がとても効果的に使われている。
ターフーが泳ぐ姿は魚のようにしなやかで美しい。
心に染みる物語だった。



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