猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ジョニーは戦場へ行った

2016-08-19 05:16:26 | 日記
1971年のアメリカ映画「ジョニーは戦場へ行った」。
第一次世界大戦にアメリカが参戦し、青年ジョー・ボーナム(ティモシー・ボトムズ)は
徴兵され、ヨーロッパへと出征していた。落下した砲弾が炸裂し、大地が割れた。ジョー
は今<姓名不詳重傷兵407号>として、前線の手術室に横たわっている。ジョーは目、鼻、
口、耳を失い、運び込まれた病院で、壊死して機能しない両手と両足も切断されてしま
う。首と頭をわずかにしか動かせないジョーは、医師に意識がないものと診断されてし
まう。今がいつで、どれだけ時間が経ち、自分がどこにいるのかもわからないジョーの
意識は、現在と過去の間をさまよう。

ダルトン・トランボの小説を本人が自ら監督し制作した映画である。私は中学生の時に
原作を読んで大きな衝撃を受けた。その時の本のタイトルは「ジョニーは銃をとった」
で、そちらが原題である。そしてずっと後になって映画化されていることを知り、観たの
だった。
こんなに衝撃的で、悲惨で、救いのない作品もそうないのではないだろうか。手足も
なく、目も鼻も口も耳も顎もない(つまり顔がえぐり取られている)。全く動けないし、見
えないし、話せないし、聞こえないのである。自分に意識があることを知らせようと首や
頭を動かしても、医師はただのけいれんだと言う。医師にとっては、心臓は動いていて
も、肉の塊でしかないのだ。こんな恐ろしいことがあるだろうか。生きている意味など
なく、死にたくても、自殺もできないのだ。
他人と全くコミュニケーションを取れないジョーのできることは、考えることだけだ。音も
ない暗闇の世界で考えをめぐらすだけって、どんなにか辛いだろう。辛いなんて言葉
では言い表せない程だろう。残してきた恋人や家族は、彼が死んだと思っていること
だろう。そしてラストのあまりも救いのなさ。大体小説を映画化したら、小説の方がい
い!と思うことが多いのだが(あくまでも私の場合は、である)、この映画は小説と同じ
くらい良かった。原作者が監督を務めたからだろうか。ティモシー・ボトムズ、最近見
ないなあ。



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