猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

残像

2018-05-05 21:33:22 | 日記
2016年のポーランド映画「残像」。

第2次世界大戦後、スターリンの影響下にあるポーランド。全体主義による圧政が
敷かれる中、前衛的な作風で有名な画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ(ボ
グスワフ・リンダ)はシャガールらと交流を持ちながら、創作活動と大学での美術
教育に情熱を注いでいた。しかし、芸術を政治に利用しようとする政府に反発した
ために大学から追放される。それでも彼を慕う数人の学生たちの協力を得ながら自
らの信念を貫き通そうとし、レジスタンスのシンボルとなっていく。

2016年10月に亡くなったポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダの遺作である。こ
の人は一生を通じてレジスタンス的な映画を作ってきたのだなあ、と思った。正に
ライフワーク。ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキという画家は知らなかったが、
彼の苦悩に満ちた人生が描かれている。第1次世界大戦に出兵して左手と右足を失
いながらも、絵の創作に命をかけ続けた人だ。私は絵がとても好きなので、芸術家
が弾圧されることに非常に怒りを覚える。
ストゥシェミンスキの家には離婚だか別居だかして妻の元にいる娘が何かと世話を
焼きに来る。コーヒーを淹れたり、タバコの吸い過ぎを注意したり。この子がまた
しっかりしている。時代のせいかもしれない。政府に逆らったために大学教授の仕
事を失ったストゥシェミンスキは次第に困窮していき、絵の具も買えなくなる。今
の私たちには想像がつかないようなものすごく質素な食事。よくあれで生活してい
けるものだ、と思った。
ストゥシェミンスキ役のボグスワフ・リンダの演技が素晴らしい。ストゥシェミン
スキの苦悩や怒りや絶望を見事に体現していると思った。こういう画家がいたのだ
ということを忘れないでおきたい。アンジェイ・ワイダの映画はいくつか観たが、
1番印象に残っているのはやっぱり「カティンの森」である。カティンの森事件も、
ナチスのユダヤ人迫害と同じように、忘れてはならない歴史の闇だと思う。



ねむねむノエル。









ベルもねむねむ。まあベルはおばあさんだしね(^-^;






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