猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ノー・マンズ・ランド

2018-05-08 21:39:23 | 日記
2001年のスロベニア・イタリア・フランス・イギリス・ベルギー合作映画「ノー・
マンズ・ランド」。

1993年6月、ボスニア紛争の最前線。霧で道に迷ったボスニア軍の兵士たちは、い
つの間にか敵地に入り込み、気づいた時にはセルビア軍の攻撃が始まっていた。唯
一の生存者チキ(ブランコ・ジュリッチ)は、何とか塹壕に辿り着き身を隠す。そこ
はボスニアとセルビアの中間地帯"ノー・マンズ・ランド"。偵察に来たセルビア新
兵ニノ(レネ・ビトラヤツ)と老兵士はボスニア兵の死体の下に地雷を仕掛けて引き
上げようとする。その瞬間隠れていたチキが2人を撃ち、老兵士は死に、ニノはケ
ガを負う。チキとニノの睨み合いが続く中、死んだと思われていたボスニア兵ツェ
ラ(フイリプ・ショヴァゴヴィッチ)が意識を取り戻す。しかし、少しでも体を動か
せば地雷が作動するためツェラは身動きがとれない。チキはツェラを気遣いつつも
敵兵ニノに目を光らせる。

ボスニア紛争を舞台にした反戦映画。すごくおもしろかった。銃撃シーンなどは少
なく、ボスニア兵のチキとツェラ、セルビア兵のニノ、この3人の人間ドラマのよ
うな感じになっている。私は未だにボスニア紛争のことがよくわからない。映画の
中でもチキとニノが「戦争を始めたのはセルビアが先」「いやボスニアが先」と口
論するシーンがあるが、当事者たち、特に下っ端の兵士たちもよくわかっていなか
ったのではないだろうか、という気がする。ボスニア兵のチキとツェラは兵士の服
を着ておらず、Tシャツにジーンズという普段着である。それだけいきなり戦争に
駆り出されたということだろう。市民を巻き込んだ悲惨な紛争だったのだ。
とてもシニカルでブラック・ユーモアも感じさせる物語である。狭い空間に3人だ
けなので、もしかすると国と国は戦っていても、チキとニノの間には友情のような
ものが芽生えるのではないだろうか、という感じもしたが、やはりそうはいかなか
った。体の下に地雷を仕掛けられたツェラは、チキに逃げろと言うが、チキはツェ
ラを置いて逃げられない、絶対地雷のプロに取り外させてもらうから味方が来るま
で頑張れ、と励ます。しかし待っている運命は残酷なものだった。
終盤物語は大きく動き、絶望を感じさせられる。チキ、ニノ、ツェラといった普通
の青年たちがどうしてあんな目に遭わなければならなかったのか。戦争の不条理さ
を強く表現しているラストシーンに胸が苦しくなる。傑作である。




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