猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

哀しみのトリスターナ

2019-12-16 21:43:21 | 日記
1970年のスペイン・イタリア・フランス合作映画「哀しみのトリスターナ」。

16歳で親を失ったトリスターナ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、老貴族のドン・ロ
ペ(フェルナンド・レイ)の養女となる。若く美しいトリスターナを、次第に娘と
してではなく女として見るようになるロペ。2人は事実上の夫婦として暮らす。
最初はロペの言うことを何でも聞いていたトリスターナだが、やがて自我に目覚
め始める。そんなある日、トリスターナは若い画家オラーシオ(フランコ・ネロ)
と出会い、恋に落ちたことをきっかけに、ロペへの憎しみを募らせていく。

ルイス・ブニュエル監督作品。幼い時に父を亡くし、16歳で母を亡くしたトリ
スターナは、没落貴族のドン・ロペ(もしかすると母と関係があったかもしれな
い)の養女として引き取られる。ロペは初めこそトリスターナを娘としてかわい
がっていたが、すぐに女として見るようになる。従順だったトリスターナだった
が、外出も自由にできない生活に不満を抱き、やがて勝手に街へ出るようになる。
そのことにいらつくロペ。そしてトリスターナは若い画家のオラーシオと恋に落
ち、駆け落ちしてしまう。
ロペは財産があるので働いておらず、毎日決まった時間にバーへ行き、仲間たち
とおしゃべりに興じている。当時の没落貴族はああいう生活をしていたんだな、
というのが興味深い。トリスターナは老人との生活に不満を感じるようになる。
そんな時街で画家と出会い恋愛関係になってしまうのだ。そしてそのことでロペ
を憎むようになってしまう。やがて画家と駆け落ちするトリスターナだが、ロペ
は「必ず戻ってくる」とつぶやく。ロペのその姿はとてもみじめに見えた。
可憐で無垢な少女が、冷徹な女性に変わっていく様子をカトリーヌ・ドヌーヴが
怖いくらいのリアリティを持って演じている。彼女の硬質な美貌はトリスターナ
役にぴったりだ。駆け落ちしたトリスターナだが、ロペが言った通り帰ってくる。
しかし脚に重い病気を負っていて、トリスターナは右脚の切断を余儀なくされる。
年を取って温和になったロペに対して、トリスターナはどこまでも冷淡だ。家の
中に響くトリスターナの松葉杖の音が、彼女の心を表しているかのように硬く冷
たい。トリスターナはすっかり変わってしまっていた。ロペの愛用のスリッパを
生ゴミと一緒に捨てる場面などぞっとさせられる。ラストもトリスターナは氷の
ように冷たい。数奇な運命を辿った女性の人生を描いた、おもしろい映画だった。




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