猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

エッセンシャル・キリング

2020-05-19 22:59:15 | 日記
2010年のポーランド・ノルウェー・アイルランド・ハンガリー合作映画「エッセン
シャル・キリング」。

アフガニスタンでアメリカ兵を殺したアラブ人兵士ムハンマド(ヴィンセント・ギャ
ロ)は米軍に捕えられ、厳しい尋問を受けた後、移送される。護送車の事故に紛れて
脱走したムハンマドは、傷の痛みと飢えに苦しみながら、雪に閉ざされた深い森の中
を逃走する。

イエジー・スコリモフスキ監督による全編主人公のセリフがないという異色作。第
67回ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞と最優秀男優賞を受賞した。アフガニ
スタンで米兵を殺したアラブ人兵士のムハンマドは、米軍に捕まり拷問を受け、どこ
かに移送されるが、護送車の事故に紛れて逃走する。それからのムハンマドはただひ
たすら雪の中を逃げる。民間人を殺して車を奪ったりもする。観ている方も寒くなり
そうな雪の森の中をとにかく必死で逃げるのだ。ムハンマドのセリフは一切ない。悲
鳴やうめき声くらいは上げるのだが。何故しゃべらないのかわからないが、とにかく
全くしゃべらない。
ムハンマドは傷を負っており、その痛みや飢えに苦しんでいる。蟻を食べたり樹皮を
剝がして食べたり釣り人から生魚を盗ったりする。彼が赤ん坊に授乳している母親に
取った行動は驚いた。しかし人間は極限状態に置かれるとああいうこともしてしまう
のかもしれない。銃を突き付けられた母親は不運でしかない。
ムハンマドは逃げ続ける。休んではいられない。凍死するからだ。けれども最初は米
軍の追手から逃げていたのが、途中からはどこへ行けばいいのかわからなくなる。そ
れでも止まる訳にはいかないのだ。退屈そうな映画に思えるかもしれないが、83分
という上映時間と、ヴィンセント・ギャロの鬼気迫る表情演技が素晴らしく、私はお
もしろく観られた。終盤少しホッとするシーンもあるが、ムハンマドの血が付いた白
馬が佇んでいるラストは印象的である。全編セリフなしで演じ切ったヴィンセント・
ギャロはすごい。




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コメント (2)
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