昭和38年、東京台東区で当時4歳のよしのぶちゃんが誘拐され、身代金を奪われるという事件が発生しました。
夕方、公園に遊びに行くと言って出かけたよしのぶちゃんの姿が忽然と消えうせた2日後、犯人から身代金要求の電話が入ります。指定の場所に身代金を届けますが、警察の失態から身代金は奪われ、よしのぶちゃんの安否も分からないまま、事件は迷宮入りかと思われました。
当時、この事件は大々的に報道され、日本中がこの話題で騒然となったのです。
チエちゃんはよしのぶちゃんと大して年齢が違わなかったものですから、他人事ではなかったのでしょう、お母さんも、おばあちゃんも、「知らない人について行ってはいけない」と注意したものでした。
それから、2年後の昭和40年7月警察の必死の捜査により、犯人が逮捕され、よしのぶちゃんは遺体となって発見されました。何と、よしのぶちゃんは自宅から数百メートルしか離れていないお寺の墓地に埋められていたのでした。
チエちゃんはなぜか、この時の報道映像をいつまでも覚えています。
墓石の回りに大勢の捜査官がいました。
よしのぶちゃんが「僕の分まで生きてくれ」と言っているように思えました。