ヒロシは猫に「キャサリン」と名前を付けた。
「え~~、何でそんな名前にしたの? キャサリンなんて、呼びづらいじゃない!」
「いいだろ、べつに。本当は『チエ』って付けようと思ったんだぜ。けど、紛らわしいだろ!?」
「冗談は、やめてよ。まあね、飼い主はあなただから、好きなようにすればいいけど。
え~と、キャサリンの愛称は・・・キャシーかな?キャシーなら呼びやすいんじゃない!」
キャサリンは、アメリカン・ショートヘアーのメスです。一応、血統書付き。
ところが、我が家に来た途端に風邪を引いてしまった。
「ほうらね、言ったでしょ。夏子は駄目だって。」
こう言いながら、私の猫に関する知識は、全て祖母に教わったことだと思った。
チエちゃん家で、主に猫の世話をしていたのは、おばあちゃんでした。
みぃが子猫を産んだ時、まだ目も開かない子猫たちを、おばあちゃんは川へ捨ててきたのでした。
「ばあちゃん、子猫が可哀相だよ。どうして、捨てちゃうの?」
「夏に生まれの猫は、丈夫に育たないんだよ。冬の寒さに弱いからね。もう少しして目が開いて可愛くなったら、情が移って捨てられなくなるだろ。」
チエちゃんは、ふ~ん、そんなものかと理解したのでした。
でも、冬生まれでも、もらわれていく子猫は稀でした。猫は、一家に一匹いればよいのですから。
昔は、猫の餌も質素でした。ご飯に煮干を混ぜて与えていました。
キャットフードなどありません。
おばあちゃんは、煮干を細かく砕いてご飯に混ぜながら、教えてくれました。
「煮干を丸ごとあげると頭の苦い部分を残すから、こうやって細かくしてあげるんだよ。苦い部分が猫にとってもいいからね。
それから、イカやタコはあげちゃダメだよ。猫の体に良くないからだよ。」
猫を飼い始めて、私は忘れていたことを少しずつ思い出している。
キャシーは遊び盛り、今も、モニターの前でカーソルの動きを興味深そうに眺めています。