2月10日 バレンシア その2

2010年02月10日 | 風の旅人日乗
アリンギ5。出艇準備を中断し、クルーも陸上に引き上げた。


実はまだ、海に出ていない。
ポート・アメリカスカップの陸上本部に、アンサリング・ペナント、APが掲揚されている。

防衛艇、挑戦艇、ともに出艇していない。
アンサリング・ペナントが降下されてから3時間以降に予告信号が発せられる。
今吹いている北風が落ちてシーブリーズが入ってくる、という予報と、今の北風は落ちない、という、矛盾する2つの予報があるらしい。

また、今の問題は風そのものではなく、昨日から吹き続けた北風によるうねりが大きいことなのだという。

午前10時を過ぎたが、気温は夜明けの頃よりも逆に下がってきているように感じる。
これだけ寒くて、シーブリーズが入ってくるものなのだろうか?


今回のアメリカスカップで、ユーロスポーツのコメンテイターを務めるポール・ケヤードが、
2日も続けて特別番組が流れるのを防ぐために仕事に精を出している。
ポール・ケヤードは自分のブログで、ヨットレースというスポーツの中でも最も重要な試合が、
風のコンディションに左右されすぎることを懸念している。
この時期のバレンシアでヨットレースを行なうこと自体にも疑問を呈している。



メディアボート群も、なすすべなく待機中

2月10日 バレンシア

2010年02月10日 | 風の旅人日乗
今日で2月も中旬に入った。
今月最初の日は、まだ伝統航海カヌーのホクレアに乗ってハワイ沖を航海していたが、
なんだかそれが、ずいぶん昔のことだったように思える。




今日は、防衛者、アリンギのドックアウト(出艇)風景を見に行く予定。

昨日の夕方、レースコミッティーは、
「明日10日、午前11時54分以前に予告信号が発せられることはない」
と発表した。

少なくとも午前中は風が強過ぎて、レースができない公算が強く、
レース艇が無駄に海上で過ごす時間を増やさないため、との理由だ。
ウイングマストを立てている〈USA〉にとっては特に、
ありがたいコミッティー判断だろう。

風が予報よりも長く続いて、午後も強く吹き続けるようなら、本日のレースが再び延期されることも有り得ることになる。

〈アリンギ5〉は、昨日のレイデイを利用して、
長くテストしてきた直線の保守的なストレートな形状のダガーボードを外し、
進水当初に装備していたS字型のものに変えた。

S字型のダガーボードは、風下側の船体を揚力で上方向に持ち上げてよりパワフルなセーリングを可能にする。
その替わり、微風のクローズホールドでのリーウエイは、直線のダガーボードに比べると増える。
微風のクルーズホールドでの性能よりも、より強い風でのリーチング性能を求める、ということなのだろうか?

つまり、今日、2月10日のレースが強風になる(天気予報では、そのように言われている)と確信したのだろうか?
恐らく、自分たちが一方的に設定したレース・コンディション(海面上60メートルの高さでの風速が15ノット未満、波高1メートル未満)では、
直線のダガーボードのほうが優れているのだろう。
しかし、それ以上の風速、波高のコンディションでレースをやらなければならないとすれば、
S字型ダガーボードのほうがいいかも、ということなのだろうか?
朝の出艇時に、このことについて話をしてくれそうなアリンギの誰か(トム・シュネッケンバーグか、グラント・シマーかな?)に会ったら、
まわりの空気を読んだ上で、素早く聞いてみよう。

〈アリンギ5〉がS字型ダガーボードをテストしていたのは、進水後比較的短期間で、
それ以降はずっと直線形のダガーボードでセーリング・テストを続けていた。
S字型ダガーボードの機能(ダガーボードの上げ下げのシステムは複雑で、しかもセーリング中ここには非常に高いロードが掛かる)の信頼性や、
セーリングデータは充分にあるのだろうか?

〈アリンギ5〉のサイズのヨットにとってダガーボードの取替えは、
大型クレーンを使っての大仕事になり、
出艇直前の短い時間でできることではない。

「レースでテストをするな!」という教えは、
オプティミスト・ディンギーでレースをする少年少女たちでも知っている、
ヨットレースにおけるゴールデン・ルールだと思っていたのだが…。

では、続報は海から上がってきてから…


2月9日 バレンシア

2010年02月10日 | 風の旅人日乗
伊勢屋 稲荷に 犬のくそ。

昔の江戸の町に多かった物トップ3だそうだ。

自転車 オレンジ 犬のくそ。

現代のバレンシアの町に多い物トップ3だ。

自転車専用レーンが、歩道にグリーンで色分けされて確保され、
気持ち良さそなスピードで、自転車たちが行き来している。



町全体は平坦だし、車よりもバスよりも地下鉄よりも徒歩よりも、
自転車は最も優れた移動手段だと思われる。
ポート・アメリカスカップに通うセーラーたちも、多くが自転車通勤者だ。
町の至るところにある自転車屋さんのほとんども、レンタル・バイクを用意している。

バレンシア市内では、街路樹のほとんどがオレンジの木で、
鮮やかなオレンジ色をした果実がたわわに実っている。
手を伸ばせば届く高さなのに、誰もそのオレンジを収穫しようとしない。



その街路樹のすぐ横で開店している果物&八百屋さんには、
それなりの値段で数種類のオレンジが並べられている。

無料(だと思われる)オレンジたちが、
揃って「どうぞ、御随意に!」と言いながら、
すぐ目の前の木にたわわに実っているというのに、
おばちゃんたちはそれらのオレンジたちにはまったく無関心で、
店先に積まれたオレンジを、一所懸命選んでいるのだ。

うーん、これは一体どういうことなのか?

昔、葉山が大きな別荘や邸宅が並ぶお屋敷町だった頃、
それらの家々の広い庭には、たくさんの夏みかんがぶら下がっていて、
その黄色の明滅が、佳き時代の葉山の、冬の光景でもあったのだが、
それらの夏みかんはただ実っているだけで、鳥たちさえ見向きもしなかった。
とても酸っぱい果実だったのだ。

それと同じで、冬のバレンシアの街路樹に実っているオレンジは、
やはり、食べられないほど酸っぱいオレンジなのだろうか?
色だけ見ると、とても甘そうなオレンジ色なんだけどなぁ。

酸っぱいとしても、どれくらい酸っぱいものなのか、味を試してみたいのだが、
周りの眼が気になって、それをもぎ取る勇気が、どうしても湧いてこない。
昔はこうじゃなかったのになあ…。好奇心が自分の行動を決めていたのになあ…。
情けないなあ…。

陽が暮れると、町の歩道は犬を散歩させる人で溢れる。
そして犬たちは、暗いことをいいことに小便、大便を歩道にしまくるのだ。
パリよりは少しマシだが、それでも、あー、嫌だ。歩きながらよそ見ができない。
皆さん、気にならないのかな?

第33回アメリカスカップのほうは、本日はレイデイ。
バレンシアは昨日と打って変わって、青空が広がり、
冷たいオフショアの風(北西風)が強く吹いている。

その風が強すぎて、挑戦者も防衛者も、海に出ない。
インフレータブルボートを仕立てて2隻のセーリングを見に行こうという画策は空振りに終わる。

ということで、本日はこれでおしまいです。