(第1レース。2月12日からの続き)
ファーリングしていたジブをやっと開くことができた〈USA〉はコントロールを取り戻し、ポートタックでスタートラインに戻ってスタートすることができたが、そのときには〈アリンギ5〉は、すでに風上への高さに換算して400メートル以上も先を走っていた。
〈USA〉が、センターハルを浮き上がらせて猛然と〈アリンギ5〉を追い始める。
〈アリンギ5〉の走りが重そうなのに比べると、僅か6ノットから10ノットの風の中で、〈USA〉は鳥のように軽やかに、しかし怖いような迫力でセーリングする。
何分もしないうちに、少なくともこのコンディションでは、〈USA〉のほうが〈アリンギ5〉よりも圧倒的に速いことを多くの人が理解した。
あっという間に〈USA〉が、400メートルの距離を詰める。
しかも、アウターエンドからポートタックでスタートした〈アリンギ5〉に対して、スタートラインのずいぶん右側で同じくポートタックでスタートした〈USA〉のはずなのに、〈アリンギ5〉に追いついたときには、〈アリンギ5〉のかなり風上側で並んだ。
スピードだけでなく、高さ性能でも勝っているのだ。
そのままのペースをキープして〈アリンギ5〉の前に出た〈USA〉だが、
防衛艇との高さの差が300メートルを超えたところで、
それまでより風速が上がったようには見えないのに、
まるで予定した行動のようにジブを降ろした。
この日の風はシフトもパフも非常に不安定だった。これ以上リードを広げて、相手艇と違うかもしれない風のエリアに入っていくのは危険だと考えた、
としか理由が考えられない挑戦艇の行動だった。
ウイング一枚だけの〈USA〉は、それでもジワジワとスピードで前に出て、高さの差も広げていく。
これはもう、誰が見てもクローズホールドでの勝負はあった。
ダウンウインドで、どういう展開になるか、が次の興味だ。
しかし、ダウンウインドになってもほとんど見かけの風の方向が変わらずに「飛び」続けるこの2隻の大型マルチハルの間に、アップウインドとダウンウインドで劇的な差があるとは考えにくい。
しかも、この日〈アリンギ5〉は微風用のストレート・タイプのダガーボードを装備している。これはクローズホールドを効率良くすることはあっても、ダウンウインドではなんらの利益をもたらさない。
3分21秒差をつけて風上マークを回った〈USA〉は、ダウンウインドではさらに凄みを増す走りを見せ、追いすがろうとする〈アリンギ5〉を置き去りにしていった。
追いかけるのをあきらめたのか、〈アリンギ5〉は風上側のハルからウォーターバラストの水を排水する。
「口をあんぐりとさせて」、この日バレンシア沖にいたみんながこのレースを目撃した。
空飛ぶ〈USA〉は、正直、笑いたくなるくらい速かった。
公式のフィニッシュでの時間差は15分28秒。
〈アリンギ5〉はフィニッシュラインでペナルティーターンをするためにラフィングしたときに、フィニッシュラインのコース側まで完全に戻ることができないままタッキングして、ベアウエイして帰ろうとしたが、ペナルティーを解消したというサインが出ないために、5分ほどラインの近くをウロウロした末に、やっとフィニッシュした。
スタート前、まだ元気だった頃の防衛艇〈アリンギ5〉。観戦艇の間を颯爽と走り回っていた。
怖いほどのスピード性能を見せ付けて第1レースをフィニッシュしたあとの挑戦艇〈USA〉。
ウイングは、前後レーキ、左右カント、自在に素早く変えることができる
ファーリングしていたジブをやっと開くことができた〈USA〉はコントロールを取り戻し、ポートタックでスタートラインに戻ってスタートすることができたが、そのときには〈アリンギ5〉は、すでに風上への高さに換算して400メートル以上も先を走っていた。
〈USA〉が、センターハルを浮き上がらせて猛然と〈アリンギ5〉を追い始める。
〈アリンギ5〉の走りが重そうなのに比べると、僅か6ノットから10ノットの風の中で、〈USA〉は鳥のように軽やかに、しかし怖いような迫力でセーリングする。
何分もしないうちに、少なくともこのコンディションでは、〈USA〉のほうが〈アリンギ5〉よりも圧倒的に速いことを多くの人が理解した。
あっという間に〈USA〉が、400メートルの距離を詰める。
しかも、アウターエンドからポートタックでスタートした〈アリンギ5〉に対して、スタートラインのずいぶん右側で同じくポートタックでスタートした〈USA〉のはずなのに、〈アリンギ5〉に追いついたときには、〈アリンギ5〉のかなり風上側で並んだ。
スピードだけでなく、高さ性能でも勝っているのだ。
そのままのペースをキープして〈アリンギ5〉の前に出た〈USA〉だが、
防衛艇との高さの差が300メートルを超えたところで、
それまでより風速が上がったようには見えないのに、
まるで予定した行動のようにジブを降ろした。
この日の風はシフトもパフも非常に不安定だった。これ以上リードを広げて、相手艇と違うかもしれない風のエリアに入っていくのは危険だと考えた、
としか理由が考えられない挑戦艇の行動だった。
ウイング一枚だけの〈USA〉は、それでもジワジワとスピードで前に出て、高さの差も広げていく。
これはもう、誰が見てもクローズホールドでの勝負はあった。
ダウンウインドで、どういう展開になるか、が次の興味だ。
しかし、ダウンウインドになってもほとんど見かけの風の方向が変わらずに「飛び」続けるこの2隻の大型マルチハルの間に、アップウインドとダウンウインドで劇的な差があるとは考えにくい。
しかも、この日〈アリンギ5〉は微風用のストレート・タイプのダガーボードを装備している。これはクローズホールドを効率良くすることはあっても、ダウンウインドではなんらの利益をもたらさない。
3分21秒差をつけて風上マークを回った〈USA〉は、ダウンウインドではさらに凄みを増す走りを見せ、追いすがろうとする〈アリンギ5〉を置き去りにしていった。
追いかけるのをあきらめたのか、〈アリンギ5〉は風上側のハルからウォーターバラストの水を排水する。
「口をあんぐりとさせて」、この日バレンシア沖にいたみんながこのレースを目撃した。
空飛ぶ〈USA〉は、正直、笑いたくなるくらい速かった。
公式のフィニッシュでの時間差は15分28秒。
〈アリンギ5〉はフィニッシュラインでペナルティーターンをするためにラフィングしたときに、フィニッシュラインのコース側まで完全に戻ることができないままタッキングして、ベアウエイして帰ろうとしたが、ペナルティーを解消したというサインが出ないために、5分ほどラインの近くをウロウロした末に、やっとフィニッシュした。
スタート前、まだ元気だった頃の防衛艇〈アリンギ5〉。観戦艇の間を颯爽と走り回っていた。
怖いほどのスピード性能を見せ付けて第1レースをフィニッシュしたあとの挑戦艇〈USA〉。
ウイングは、前後レーキ、左右カント、自在に素早く変えることができる