STAP細胞について
A.STAP細胞について
a.科学者の科学に対する方法とその態度
1.ネイチャーに掲載された「STAP細胞」の論文に目を通しました。本当に便利
で、すごい時代になったものです。ネイチャーのような科学誌でも、「これを読みたい
と思う者もいるだろうから、Webにアップロードしておいてやろう」と考える人がいれ
ば、こうして読めるのです。昔は、こうは行きませんでした。図書館に行って読んで
ノートを取るか、書店に行って購入の申し込みをするしかありませんでした。ちなみ
に、この「STAP論文」は近畿大学中央図書館が提供していて、検索ワード「STAP
細胞の論文を読みたい」でヒットします。
2.私は、人が自分の思考と行動を通して作り上げて行く社会を考えようとしている一
人です。今、世界の耳目を集めているであろう(但し、こう思っているのは日本人
だけかもしれません)「STAP細胞」を、私が取り上げようとするのは、「STAP
細胞」の存在を巡る科学者の思考が、私の思考の対象となる限りのことにおいてです。
今回の騒動は、そもそもその発端が「STAP細胞」の提起者である小保方晴子氏の
「“仮説と言わなければならないもの”と“真といい得るもの”」に対する科学者とし
ての認識の混乱にあります。この問題に対して私達は、ヒュームとカントにまで遡るこ
とができます。また近くは、カントを引き継がれたカール・ポパー氏が俎上に上り
ます。
3.ポパー博士については、このブログの2013年7月28日の記事、「ポパー博士のヘ
ーゲル弁証法に対する評価について」でも書きました。博士は、「知性は、その
法則を自然から導き出すのではなくて、その法則を自然に課すのである」(『推測と反
駁』・「カントのコペルニクス的転回」)と記され、若い科学者の知性を大いに刺激
されると同時に、科学者の誤った推論や仮構の世界をそれが反証されるまでの仮説とし
て容認してしまうという、科学に名を借りたいわば科学者の倒錯した世界観を
彼らが持つに至る場合もあるであろうという危惧に対しても道を開かれてしまわれまし
た。この危惧に対して私達はしばしば自戒と共にヒュームとカントに立ち返らなく
てはなりません。前述のブログでも書いていますように、「自然の振る舞いが法則、或
いは、仮説として記述できるのは、自然がそのように振る舞っているか、或い
は、振る舞うことが推論できるときのみです」。仮説は事実の積み重ねの上に成立しま
す。事実の裏付けのない仮説を仮説とは呼びません。また仮説のもたらす結果
は「見かけの善」を拒絶するものでなければなければなりません。結果が「見かけの
善」を拒絶するものである限りその仮説は真と言えます。しかし、自然の振る舞い
は自然の振る舞いでありそこに善悪の判定の入り込む余地はないという反論があるかも
知れません。またしかし、科学は社会と不可分のものです。社会科学と言わ
れる領域もあります。人は思考します。その思考は見かけの善であってはならないとい
うのは、私が辿り着いた信念でもあります。
B.STAP細胞
1.STAP細胞とは、“Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency(STA
P)”とネイチャー論文に記載されています。読んで字の通りの「刺激トリガーによ
る多能性獲得」細胞です。また、同論文は冒頭の「要約」において次のように述べま
す。
”Through real-time imaging of STAP cells derived from purified
lymphocytes, as well as gene rearrangement analysis,
we found that committed somatic cells give rise to STAP cells by
reprogramming rather than selection. STAP cells
showed a substantial decrease in DNA methylation in the regulatory
regions of pluripotency marker genes. Blastocyst
injection showed that STAP cells efficiently contribute to chimaeric
embryos and to offspring via germline
transmission.” “Thus, our findings indicate that epigenetic fate
determination of mammalian cells can be markedly
converted in a context-dependent manner by strong environmental
cues.”
訳文: 但し、細胞学において使用される用語とこの訳において使用した言葉の不一致が
ある場合、それは私の知識の不足によります。
「純粋リンパ球から派生したSTAP細胞のリアルタイム画像を通して、遺伝子組み換
え解析と同様、我々は、体細胞のSTAP細胞への変化は、セレクションより、リプロ
グラミングが関与していることを発見した。STAP細胞は、多能性マーカー遺伝子の
DNAメチル化の規制領域において、大きな減少を示した。胎盤胞注入は、STAP細
胞がキメラ胚と生殖細胞伝達を経由した子供に極めて有効であることを示した。」「こ
のように、我々の発見は、哺乳動物の細胞のエピジェネティックな宿命の決定は、強い
環境刺激による状況依存の方法の中で、明らかに変換し得ることを示した。」
a.主張は次の3点に要約することができます。
α) STAP細胞は、刺激によって細胞がリプログラムされたものであること。
β) リプログラムされた細胞は多能性を獲得すること。
γ) この多能性によって、一個の卵細胞から様々な臓器、組織へと分化して行く人間
の宿命的な細胞の定めは変換し得ること。
2.しかし、論文は、論文の主著者である小保方氏が提示されたデーターに御自身の過
去の博士論文の転用が指摘され、また実験の連続性を示さなければならない一連のデー
ターに切り貼りのあることが指摘されています。これによってこの論文を世界が共有す
る科学論文として維持することは難しくなっています。
C.私の推論
1.小保方氏を応援する意味で私の推論を書いてみようと思います。
a.STAP細胞はまだその存在が立証されたものではないこと。
b.むしろ現在の段階では、STAP細胞は小保方氏の仮説に従ってデーターと資料が
収集され組み立てられた、小保方氏の頭の中の存在であること。
c.しかし、このように刺激によって変異を伴う細胞が発生することは、経験上認めら
れること。
d.この経験上認められる変異を伴う細胞の発生とは、妊娠した女性が睡眠薬を服用す
ることや、風疹に罹患(りかん)することで胎児に奇形を発生することを言いま
す。また、ベトナムでは枯葉剤による胎児の奇形が報告されています。
e.このことから、上記、B‐1‐a で見たα)はあり得ること。但し、β)とγ)はマイ
ナス因子、即ち、奇形の連鎖として発現することも予測し得ること。
f.マイナス因子が発現した場合、そのメカニズムを解明すること。
g.これらのことをやり遂げてのち、尚、この細胞に人体にとってプラス因子の多能性
が認められる時、この細胞はSTAP細胞と認められること。
D.結語
1.小保方氏と理研(笹井氏)は、私の推論に対して得心の行く研究を行われ、それ
を、再度、公表して頂きたいと思います。
2.この記事が、小保方氏と理研笹井氏の目に触れることを望んでいます。
雑木林の花
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