Cycle Log

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本音のホイール論

2017-05-05 | 書評
 安定の佐藤喬編集。編集者で本を選んで良いほど、自転車乗りにとって良い本を出してる方。今回はホイールについて。

 元シマノの技術者であり、独立してSacra-cyclingを立ち上げた田中良忠氏を迎えて著された本書。ホイールの技術的な面を田中氏、フィーリングなどの面をライターの吉本司氏を担当している。
 田中氏の考えとしては、ホイールで一番重要なのは剛性で、軽量性などは2の次。剛性に一番貢献するのはリム。アルミスポークやスポークの結線に特に優位性はない。などなど、大阪のホイール屋さんのブログを教科書にしてきた私にとっては混乱させられる内容も多い。誰に、なんのためのホイールを作るかという視点の置き方の違いかなとは思うのだけど。
 ところで、俗に「ホイール(リム)の軽量化は他の部分の軽量化の7倍の効果がある」とまことしやかに言われるけど、計算によれば2倍程度の効果しかないらしい。これくらいの数値なら、私のような体重が重めのライダーは軽量を突き詰めたホイールよりも剛性の高いホイールで押し切ってしまった方がいいのかなとも思う。各地の坂や峠で出しているベストタイムもほとんどC50で出したものだしね。
 本書については、今まで意外となかった、ホイールについての基本的な考え方や見方がまとまった良い本と思う。書かれていることの部分々々について批判する人もいるだろうけど、それも含めてこういう本が出て良かったのだと思う。こういう本が出たのも、田中氏のような技術者が企業から在野に放たれたという奇貨あってのものだけど。

 余談ながら、SACRAホイールについては(細かい性能や数値はともかくとしても)良いホイールだなと思っている。正直なところ、ロードバイクの見栄えを気にする僕にとっては、シマノやマビックといった大手ブランドホイールを履かせていることについての純正感みたいなものは譲れないのでSACRAホイールを買う予定はない。
 けれど、実業団に登録してクリテリウムやサーキットレースに出走し日常的に落車のリスクにさらされている人には、安価で十分な性能を持った手組のカーボンホイールは良い選択肢になるのだと思う。落車一つで、数十万の出費が発生したり、骨折などして救急車で運ばれる趣味というのも恐ろしい世界だが。














ロードバイク本音のホイール論
クリエーター情報なし
洋泉社

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