通勤電車の車窓から朝の田園風景を眺める。むき出しになっている土は露だろうか、水気を吸って黒く輝いている。田んぼのあぜ道は草が伸び、ところどころ黄色の菜の花が集落を成している。田んぼの中には時折り薄い赤紫の絵の具をぼかしたように、点々と草むらの中が煙っている。よくみると蓮華の花だ。もう咲き出したのか、とびっくりする。桜が散り始めて2週間、いっせいに春の息吹だ。蓮華の花は荒れた田んぼの1面に咲いていたり、ぽつんぽつんと群生しているものなど多様だ。早くも水を入れ、田植えの準備に取り掛かろうとしている田もかなりある。近頃は野菜やイチゴなども作られており、田んぼの風景も変わってきている。田植えが終わったあとの早苗を吹きぬける薫風は心地よい。もうすぐだな、と思う。菜の花が切れた丘のふもとに野いちごの白い花が眼に入る。そういえば、野いちご摘みに行ったのはいつごろだったか。子供のころ、父に連れられて行っていた昆虫採集のかたわら、歩道からちょっと入った水源地の岸辺に野いちごが群生しており、空になったアルミの弁当箱いっぱいまで採っていたものだ。それから30年、小学生の娘二人を引き連れ、同じ道を同じように捕虫網を片手に歩く。娘も同じように目を輝かせ、野いちごを見つけると歓声を上げていた。年子の二人は何かにつけて競争しており、こんな時は必ず妹のほうが多く摘んでいたなと思い出す。そういえば娘は今でもイチゴ大好き人間で、イチゴ狩りによく行っている。その二人も嫁に行き、7月には長女に赤ちゃんが出来る。初孫だ。孫を連れて同じ道を同じように散策したいと思う。少年時代から50年、福知山の登山道、水源地は今も変わっていない。何かほっとする気持ちだ。
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野いちご いうと スエーデンの映画 ベルイマン監督のを 思い出しました