栃木県はが郡の

陶工のつぶやき

たそがれの3歳児

2012-12-13 21:22:44 | 作り話
たそがれの3歳児は

ブランコに座りながら沈む夕日をながめていた

「今夜はオオクワガタは採れるだろうか?」

椎の森谷には金色に輝くオオクワガタが棲んでいると言う

「そろそろ出かけるか?」

気づくと隣に、時間犬が来ていた

しゃべるのはソフトバンクの犬だけではないのである

大きなカツラの木の下で待っていると

むこうから「ヤミバス」がやってきた

椎の森谷に行くにはこのバスに乗らなければならない

すっかり日もくれて

真っ暗な林の中をヤミバスのライトだけが通りすぎていく

ヤミバスは「イトヨーヨーの池」のほとりで停まり

たそがれの3歳児と時間犬を降ろして闇の中に消えていった

ここからさらに「オオクヌギ」のある山の中腹まで歩かなければならない

池の水がザワザワして

湯気のように「イトヨーヨー」が何匹も現れた

そして体に巻き付いてくる

時間犬が遠吠えをすると「イトヨーヨー」はピタリと動きを止めた

時間犬の遠吠えはほんの少しだけ時間を止めることができるのだ

そのスキに

たそがれの3歳児と時間犬は体から「イトヨーヨー」を取り払い

山道を走った

イトヨーヨーが動き始めたころには

たそがれの3歳児は時間犬の背中に乗って山道を駆け上がっていた

「危なかったな。」と時間犬が言う

「おかげで助かったよ。」

時間犬の背中から降りて

たそがれの3歳児は再び歩き出した

暫く行くと赤い鳥居が見えてきた

ここには「隠れ婆さん」が時々現れるのだ

見つかったら

「有り金ぜ~んぶ置いていきな~。でないと・・・





食っちまうよ~」


と恐ろしい顔でせまってくる


たそがれの3歳児と時間犬は

足音を殺して、息を止め静かに通り過ぎた・・・




「お待ち!」



「黙って通り過ぎる気かい?」


「うわ!」

たそがれの3歳児と時間犬は懸命に走った

ふりむくと

ものすごいスピードで追いかけてくる!


時間犬はまた遠吠えをした

一瞬止まったかにみえたオババは

ニヤリとして

「無駄だよ、私にゃそんなものは効かないよ~。」


続く・・・