窯の中の陶器が冷めてくるとき
ピン♪・・ピン♪
と音をたてる時がある
陶土と釉薬の収縮差が出す音
聞いていて思い出したことがあります
かれこれ50年近く前のこと
冬の十和田湖に一人でバスに乗り訪ねました
観光客も途絶える季節
生活路線として数便のバスが走っておりました
雪の中ほとんどの店が閉まっていて
歩く人もなく
静けさだけの湖畔
湖面の氷が波にくだけ
流氷のように漂っている
そして
氷どうしがぶつかり
カラ~ン コロ~ン・・・♪と鳴っている
良く見てみると
小さな氷は岸に近く大きな氷は岸から遠く
土星の環のように層をなしている
小さな氷は甲高く
大きくなるほど低音で
波に従って、外輪山に木霊しているのでした
十和田湖を独り占めしているようにも思えましたが
自然の雄大さに比してちっぽけな自分がそこにいた
もしかすると
この響きは天まで届いているのではなかろうか
静かに深く清らかに
帰りのバスが来るまで
ずっと聞いていたのでした
今になって
あれは現実だったのだろうかと思うほど
神秘的な体験でした