「おためごかし」と「想定外」

2011-05-08 05:02:47 | プロフィール
「おためごかし」という言葉をご存知でしょうか。「御為倒し」と書きます。辞書によれば「表面は相手のためになるように見せかけて、実は自分の利益をはかること」だそうです。

福島原発事故で「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)のデータの公表の遅れが問題になっています。これは原発事故が発生した場合、周辺の地形や気象データなどから放射性物質の飛散を予測し、住民避難に役立てようと言うものです。

しかしせっかくのデータはこれまで公開されてきませんでした。公開されたのは事故が起きて2ヶ月になろうという5月3日。これによれば福島原発で水素爆発が発生した直後に北北西方向に放射性物質が広がる様子が伺えます。もし事前に公開されていれば多くの住民の方の被爆が防げたかもしれません。

100億円ものお金をかけたシステムは今回何の役にも立ちませんでした。公開しなかった理由は「混乱を回避するため」とのことでした。あたかも住民のことを慮って判断したと言わんばかりです。しかしはたしてそうでしょうか。本当は自分たちのミスを隠蔽したり責任を回避するためだったのではないかとの疑惑も持たれています。

こう言うのを「おためごかし」というのでしょう。

同じような言葉に「想定外」があります。ついこの間まで東京電力さんや政府高官が多用していました。最近はあまり耳にしません。たぶん事実が明らかになってくるに及んで、責任回避ではないかとの指摘に答えられなくなっているからでしょう。

ついこの間までは「福島原発の事故は津波によるもので想定外だった」と言っていました。しかし福島原発事故の引き金になった外部電源の喪失の直接の要因は、津波ではなく原発に非常電源を供給する送電線鉄塔の倒壊だったそうです。さらに津波で非常用発電機が失われ事故に至ったのです。

これに関連して先日の信濃毎日新聞では下北半島にある原発は建設中のものを含めて3つ(東北電力東通原発、東京電力東通原発、電源開発大間原発)。これに電力を供給する送電線・変電所は一つ。万が一の時対応できるのかと指摘していました。

今回の事故で原子炉だけをいくら頑丈に作っても、それを支えるすべてのインフラが稼動しなければ事故は防げないということが分かりました。

「想定外」とは誠に便利な言葉です。しかし少なくともこの言葉で自らの責任を回避してはならないのです。なぜ想定できなかったのか、本当に天災だったのか検証する事が求められています。

「おためごかし」「想定外」-これが流行語大賞にならないことを念じています。

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