実は期待しないで観た。
ヴィム・ヴェンダースの「PERFECT DAYS」。
きっと退屈なんだろうと。
いやあ、裏切られた。
良いのよ。
ただのトイレ清掃員の日々を淡々と描いただけの映画。
誰も殺されないし、エッチなシーンもない。
街を掃除する音で目覚め、歯を磨き、植物に水をやり、自販機で買った缶コーヒーを飲み、車でカセットテープから流れる古い音楽を聴き、トイレを掃除する。仕事が終わると浅草の地下で安酒を飲み銭湯に行く。布団に入り古本屋で買った100円の文庫本を読む。
その繰り返し。
ホント、それだけの日々を繰り返し描いて飽きさせない。
恐るべしヴィム・ヴェンダース。
語ることが多過ぎて困る。
まず音楽。
いきなり「朝日のあたる家」アニマルズだよ。
続いてオーティス・レディング「The dock of the bay」。
タイトルにもなっているルー・リードの「パーフェクトデイ」。
その他いろいろ。
ニーナ・シモンの「フィーリンググッド」の歌詞は正に映画の内容そのもの。
「夜が明けて、新しい一日、私の新しい人生。最高だね」
「朝日のあたる家」は主人公平山が通うスナックのママ(石川さゆり)が歌うシーンがあるが、伴奏のギターを弾くのがあがた森魚。
公園にいるホームレス風の老人は田中民。
ラストに出てくるママの元夫が三浦友和。
隅田川沿いのテラスで2人(役所広司と三浦友和)が影踏みをするシーンが切ない。
平山の姪っ子が家出をして平山のボロアパートに転がり込んで来るのだが、豊かな暮らしの姪っ子の母親(平山の妹)が「住む世界が違うからオジさんには会うな」と言っていると言うと、平山はこう答える。
「この世界は繋がっているようで繋がっていない。自分のいる世界はキミのママがいる世界と違う」。
全くその通りだよ。
世界は多層構造、見えるけど行けない世界がある。
良いね、ヴィム・ヴェンダース。
必見です。