ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ハート・ロッカー

2010-02-01 23:24:39 | は行
すごかった・・・
ついにイラク戦争版
「地獄の黙示録」ができたか!?という感じです。

「ハート・ロッカー」79点★★★


イラク報道で我々も毎日のように耳にする
凄惨な「爆弾テロ」。

その現地で
爆弾処理に当たる兵士たちの
まさに狂気と紙一重な日常を描いた映画です。


いままでのどのイラク戦争関連映画よりも
汗臭く、汚らしく、生々しく、恐ろしく、
本物っぽく感じました。


主演3人にほぼ無名俳優を起用し
脇役にレイフ・ファインズなど
「ハッ」とさせる配役をしたりするのもテクのひとつで

つまり“映画的”なお約束である
「スターは最後まで生き残る」を
あっさりくつがえそうとしてみたり

わざとズームを多様した
ホームビデオっぽい作りにしてみたり。


これまた
“観客をその場にいるかのように”させる技に
めちゃくちゃ長けてるんです。


「任務終了まであと○日」というテロップが出るたびに
「マジ、もう帰らせてくれ!」と
叫びそうになりました。


それほどに
ニュースではわからない「戦場という地獄」
説得力持って迫ってきます。


先週末に見た
マット・デイモン×ポール・グリーングラス監督の
最新イラクもの「グリーン・ゾーン」も
すごくよかったんですが

あの洗練と計算で見せる臨場感とは
また違ったリアリティがありました。


それにしても
まったく予備知識なく見て打ちのめされたけど
裏を知れば
9.11→イラク戦争を
意欲的に描いてきたスタッフ布陣なんですねえ。


脚本のマーク・ボールは
2004年、爆弾処理班に潜入取材をしたそうで
しかも
トミー・リー・ジョーンズ主演の秀作
「告発のとき」(2007年)の
原案者でもある。

撮影監督のバリー・アクロイドは
グリーングラス監督が
9.11時の悲劇の旅客機を描いた秀作
「ユナイテッド93」(2006年)で撮影を担当。

もうイラクを描くにゃ
最強のスタッフが集まったというわけです。
(ちなみに監督は女性!
しかもジェームズ・キャメロンの元妻!


報道されない戦場のリアルを描くことは
死んでいった兵士たちへの
最高の追悼でもあるけれど

当然、これは戦争の無為と狂気を
訴えているはず。

全米でも大絶賛で
本年度アカデミー賞最有力とされているけれど

まさか、戦意鼓舞と
取り違えてるアホがいるわけじゃないよね?


★3/6からTOHOシネマズみゆき座、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国で公開。

「ハート・ロッカー」公式サイト
コメント (4)
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